バスケットボールを日常会話に。ファンから“広げる側”になった私の挑戦│B.LEAGUE仕事図鑑
妹尾 奈津美さん
公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ SBグループ
「好きなことじゃないと続かない」。そう語る妹尾奈津美さんは、約10年間携わったエンターテインメント業界でのキャリアを経て、B.LEAGUE(公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)へ転身した。現在は前職で培ったマーケティングの知見を生かしながら、動画配信サービスの会員拡大やファン獲得施策を推進。目指すのは、バスケットボールが日常にある未来だ。
Index
エンターテインメント業界で駆け抜けた10年
——これまでのご経歴について教えてください。
もともと、ミュージカルや音楽、ドラマなどが好きだったので、専門学校卒業後はエンターテインメント業界に入りました。ドラマ制作の現場でアシスタントプロデューサー、プロデューサーを経験したあと、動画配信サービスのマーケティング部門へ異動。そこでは、ドラマや映画、バラエティーなど配信コンテンツの宣伝プロデューサーとしてプロモーションなどを担当しました。気づけば約10年。大好きなエンタメ業界でさまざまな経験をさせてもらい、本当に充実した日々を送りました。その一方で、少しずつ新しいことに挑戦することへ興味が出てきました。
——エンタメ業界からの転職を考え始めたきっかけは何だったのでしょうか。
一番大きかったのは、「やり切った」という感覚ですね。自分なりに全力で向き合ってきたという実感があり、完全燃焼できたんだと思います。それで、次はまったく新しい環境で挑戦してみたいと思いました。もともと私は、好きなことじゃないと仕事が続かないタイプ。仕事と趣味は分けたいという人もいると思いますが、私は逆で、興味が持てないと続けられない。それなら次に挑戦するのも、自分が本当に好きなものに関わる仕事がいいと思いました。そのとき、真っ先に浮かんだのが、バスケットボールでした。エンタメと同じくらいバスケットボールも大好きだったんです。
——バスケットボールと妹尾さんにはどんな歴史があるのでしょうか。
妹がバスケットボールをやっていたので、子どものころから試合の応援に行く機会がありました。私自身は競技経験がないのですが、身近にあるスポーツでしたね。本格的に見るようになったのはB.LEAGUEが開幕したころです。開幕戦をテレビで見たことを今でも覚えています。そこから試合会場にも足を運ぶようになり、仕事の合間をぬって都内を中心にさまざまなクラブの試合を観戦していました。試合会場へ行くたびに元気をもらっていましたし、気づけばバスケットボールは生活の大きな部分を占める存在になっていました。
——なぜ、そこまでバスケットボールに惹かれたのでしょうか。
バスケットボールって、見ていて飽きないんです。試合展開が速くて、本当に1分1秒目が離せない。それに競技だけではなく、アリーナ全体の演出や観戦体験も含めて楽しめるんですよ。もともとエンターテインメントが好きなので、そういう部分にも魅力を感じたんだと思います。試合会場に行くとスポーツ観戦というより、ライブやコンサートに近い感覚があります。実際にバスケットファンではない友人を連れて行っても、「おもしろかった」と言ってくれることが多いんです。競技に詳しくなくても楽しめる。そんなところもバスケットボールの魅力だと思っています。
経験を武器に、バスケットボールの世界へ
——バスケットボール業界を目指すなかで、なぜB.LEAGUEだったのでしょうか。
バスケットボールに関わりたいという気持ちは強かったものの、「何でもいいから業界に入りたい」と考えていたわけではありません。私には選手としてプレーした経験もなければ、スポーツ業界で働いた経験もない。だから、転職を考えたときには「自分に何ができるのか」をすごく考えたんです。振り返ってみると、これまで積み上げてきたのはエンタメ業界でのマーケティングやプロモーションの経験です。ドラマや映画、バラエティーなど、さまざまなコンテンツをどう届けるか。どうすれば興味を持ってもらえるのか。どうすればファンになってもらえるのか。そんなことを考えながら仕事をしてきました。長く携わっていた動画配信サービスの仕事は、特殊かもしれませんが強みにもなると考えました。その経験を活かせる場所はないだろうか?そう思った時に見つけたのが、バスケットボールの動画配信サービスに関わるポジションでした。本当にタイミングがよかったんです。「ここしかない!」という気持ちで飛びつきました。
——これまでの経験が活かせるポジションをバスケットボール業界の中で見つけられたのですね。現在はどんな業務を担当されているのでしょうか。
現在は、ファン拡大施策や新たな価値創出をともに推進するB.LEAGUEのトップパートナー企業を担当しています。その業務の一環として、「バスケットLIVE」(B.LEAGUEをはじめ国内バスケットボールを配信する動画配信サービス)の会員拡大施策やマーケティングにも携わっています。トップパートナー企業と連携しながら、新たなプロモーション施策やサービスの認知向上に取り組むことも重要な役割です。どんな取り組みを行えば、より多くの人にバスケットボールの魅力を届けられるのか。企業と一緒に考えながら事業を推進しています。
増やしたいのは、会員ではなくファン
——特に印象に残っている仕事はありますか。
入社して最も印象に残っているのは、昨シーズン取り組んだ会員獲得施策です。動画配信サービスのマーケティング経験はありましたが、想像していた以上に難しさを感じました。マス広告や法人向け施策、新規登録キャンペーンなど、さまざまな取り組みを行いましたが、「何をすれば会員が増えるのか」という問いに対して、すぐには答えが見つかりませんでした。失敗した施策もありましたし、数字と向き合い続ける日々は精神的にも大変でした。
——どんな部分に難しさを感じたのでしょうか。
一番大きかったのは、「バスケットボールそのものへの興味」をどう広げていくか、ということです。動画配信サービスの会員を増やしたいと思っても、そもそもバスケットボールに関心がなければサービスを利用する理由は生まれません。例えば、代表戦は見るけれどリーグ戦は見ない方もいますし、バスケットボールに興味はあるけれど、試合会場へ行ったことがない方もいます。そうした方々とどう接点をつくるのか。どうすればもう一歩踏み込んでもらえるのか。そのことを考え続けていました。
振り返ってみると、私たちが向き合っているのは会員数そのものではなく、「ファンづくり」なのだと思います。会員を増やすことだけが目的なら、短期的な施策はいくらでもあるかもしれません。でも、長くサービスを利用してもらうためには、まずバスケットボールそのものを好きになってもらう必要があります。そのために、クラブやパートナー企業など多くの方々と連携しながら取り組んでいました。私自身も試行錯誤の連続でしたが、最後までやり切りたい、という思いで向き合い続けました。
バスケットボールを、日常の存在にしたい
——最後に、あなたにとってB.LEAGUEではたらくとは?
「日々挑戦」です。
毎日のように新しい課題や取り組みが生まれますし、求められるレベルもどんどん高くなっていきます。楽しいことばかりではありませんが、その挑戦の先に、バスケットボールがもっと身近な存在になる未来があると信じています。
頑張れる理由は、やっぱりバスケットボールが好きだから。私は今も変わらず、バスケットボールが大好きです。ファンとして楽しんでいた頃とは立場が変わりましたが、今はその魅力を広げる側として関われています。その実感があるから、毎日の挑戦を楽しめていると思います。
——その先に、どんな未来を実現したいと考えていますか?
バスケットボールが日常的な存在になることです。日本代表チームが出場する国際大会期間中はテレビやSNSでもバスケットボールの話題をよく目にしますし、「昨日の試合見た?」という会話が自然に生まれますよね。でも、それはまだ特別な期間だけの盛り上がりです。私が見たいのは、B.LEAGUEのシーズン中にも同じような会話が当たり前に交わされる世界です。スポーツニュースで日常的に取り上げられたり、友人同士の会話の中で試合の話題が出たりする。そんな光景がもっと広がってほしいと思っています。その実現のためには、リーグやクラブだけではなく、長年B.LEAGUEを支えてくださっているトップパートナー企業の存在は欠かせません。私自身も日々の業務のなかでパートナー企業と同じ目標に向かって取り組み、新たなムーブメントを起こしていきたいですね。
——バスケットボールには、その可能性があると感じているんですね。
はい。先ほども言ったように、競技に詳しくない友人を連れて行ったときの反応がうれしいんです。そのたびに、バスケットボールにはもっと多くの人を惹きつける力があると感じます。ただ、その魅力を知ってもらうきっかけをつくることは簡単ではありません。だからこそ、リーグやクラブ、そしてトップパートナー企業の皆さまと一緒に、できるだけ多くの人がバスケットボールと接点を持てる環境をつくりたいと思っています。会場で試合を観戦して面白いと思った人が、次は配信でも試合を観る。配信をきっかけに興味を持った人が、実際にアリーナへ足を運ぶ。そうして少しずつバスケットボールとの距離が近くなり、気づけば生活の一部になっている。そんな人が増えていけばうれしいですね。これからも、その挑戦を続けていきたいと思います。
あわせて読みたい
条件より、熱狂。その結果がB.LEAGUEだった│B.LEAGUE仕事図鑑
interview:南部望
text:藤田奈帆子/dodaSPORTS編集部
photo:冨田峻矢
※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。





















