条件より、熱狂。その結果がB.LEAGUEだった│B.LEAGUE仕事図鑑
溝口 哲史さん
公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ システム推進グループ
ファン、選手、クラブ、そしてB.LEAGUEで働く人たち。B.LEAGUEには、多くの人を熱中させる力がある。その熱狂に引き込まれ、気づけば自分自身も夢中になっていた人がいる。2024年に入社したシステム担当の溝口哲史さんだ。人や組織の挑戦を支えながら、ともに進化していく。夢中になれる場所を追いかけてきた、そのキャリアをたどる。
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夢中になれる場所、人を求めて
——出版業界、コンサルティングファーム、外資系ITベンダーと、これまで異なる分野に次々と挑戦されてきた溝口さん。幅広いスキルをお持ちですが、転職は戦略的に行ってきたのですか。
いえいえ、そんな(笑)。キャリアをテーマにした漫画に影響され、自分に足りない部分の分析はしていましたが、市場価値は考えてもいなかったです。1社目の出版業界は本が好きで書店でアルバイトをしていたから。2社目のコンサルティングファームを選んだのは1社目でシステムエンジニアをするうちにいろいろ便利なツールを知り、もっと学びたい、知りたいと興味が湧いたから。3社目の外資系ITベンダーは、グローバルな世界を見てみたかったからです。そのときどきに好きとかおもしろいとか、もっと知りたいと思ったものを選んできただけです。
——ということは、スポーツ業界への転職も「興味」が出発点だったのでしょうか。
もともとスポーツは好きでした。小学生のころからずっとサッカーをしてきましたし、バスケットボールやラグビーも観ていました。無心になれる時間が好きで、サッカーは今も続けています。ただ、この業界で絶対に働きたいと思っていたわけではありません。憧れくらいに思っていましたね。働くきっかけになったのは、本当に偶然の出会いでした。
——「偶然の出会い」とは?
3社目の外資系ITベンダーで、ご縁が合ってB.LEAGUEに所属するクラブのデータ分析をサポートしました。そのときのクラブの方の考え方に強く共感したことがきっかけです。未来志向でデータの取り方とか、活用の仕方を主体的に考えられていて。バスケットボール業界の発展に真剣に向き合っていることが伝わってきました。こんなに先々まで考えて動く人たちは珍しいなと。スポーツ業界はおもしろそうだと感じました。
——人にワクワクされたのですね。スポーツ業界の中でもなぜB.LEAGUEだったのでしょう。
例えばチケットシステムなど、クラブごとではなくB.LEAGUEが持っている仕組みが多かったんです。B.LEAGUE全体でバスケットボール業界をどう発展させていくのか。その考え方にも興味を持ちました。
面接では自然と自分の考えを話すことができました。「より良くしていくには」とか、「技術の進化に置いていかれないように、新しいことを学び続けないと」とか。面接してくれた人と価値観が近そうだし、一緒に働けたら楽しそうだなと思い、転職を決めました。ちなみに、その方は今の上司です。正直なところ、前職に比べると待遇は多少下がりました。でも、待遇さえ良ければそれを仕事にするかというとそうじゃない。自分にとっては、この環境に飛び込むことの方が魅力的でした。
システムをつくる前に、できることを考える。
——現在のお仕事内容を教えてください。
システム・サービスの開発・運用を通して、B.LEAGUEやクラブの業務効率化や基盤の強化を推進しています。具体的には、B.LEAGUEやクラブが使うシステムや連絡ツール、外部メディア向けの広報系システム、自社内のシステムなどを広く担当しています。いわゆる社内SEのような立場に近いかもしれません。基本的に社員の声をベースに開発を進めます。
——どんなお困りごとに対応されているのですか。
例えば、B.LEAGUEでは試合ごとに何百枚もの写真をメディア向けに共有しているのですが、これまで目当ての選手を名前で検索できず、写真を探すのに時間がかかっていました。広報担当者からずっと相談を受けていた課題ですが、当時の技術ではなかなか実現できなかったそうです。でも、私の入社時点ではかなりAIが進化していました。そこで調べてみて、思ったんです。「あれ、これならいけるかも」って。
早速ベンダーと協働して「低コスト・低負荷・高速」で選手を判別してタグ付けする仕組みを構築し、短期間で実装まで完了しました。
——技術の進化によって、できることがどんどん増えていきますね。
基本的には課題があって、それをどう解決するかを考えていきますが、新しい技術がでると「何ができるかな」とつい試したくなります。生成AIの活用が話題になったときは、ちょうど社内での雑談で「試合の進行を監視するとき、複数の試合映像を確認するのが大変」「一画面で確認できる試合数も自由に変えられるようにしたい」という相談を受けていたので、何かできるかもしれないと思い、生成AIを活用して試合監視ツールのプロトタイプを自分でつくってみました。結果、コスト0円で現場の負担軽減につながるツールをつくれましたし、自分にとっても新しい技術を学ぶ良い機会になりました。
——どうしたら良くなるか。しかも低コストで。そんな意思が伝わってきます。
あまりプロジェクト化ってしたくないんですよね。プロジェクトにしたら基本お金がかかってきますし、システムをつくること自体が目的ではないので。運用を少し変えるだけで全部解決できるなら、それが一番です。既存の仕組みを少し工夫するだけで良くなるなら、その方がいいこともあると思っています。会社やB.LEAGUEの成長を考えて、コストをかけて抜本的に変えた方がよいこともありますが、コストをかけなくても改善できるならそれを選択することもありだと考えています。そのようなことを前提に「もっと良い方法はないか」を考えています。
この熱狂を途切れさせたくない
——課題解決の裏側にある、ご自身の想いについてお聞かせください。
課題を気にするとダメなんですよね(笑)。課題に気付いたらずっと考えています。もともと分析も改善も好きですし、それで誰かの仕事が楽になって喜んでもらえるとうれしくなります。一番大事にしているのは、相談してくれた人の困りごとをなくすことかもしれません。
——周囲の反響も気になります。特にうれしかった瞬間についても教えてください。
「B.LEAGUE ALL-STAR GAME」や「B.LEAGUE FINALS」などの大規模イベントでは、職域を超えて広報サポートに入ることがあるのですが、選手の写真検索システムについてメディアの方から「あれ便利になったね」と声を掛けていただくことがあります。実は自分が担当した機能なんですと伝えると、とても驚かれて。ちゃんとシステムが使われていて安心しました(笑)。会場に足を運ぶと、そういった現場の声も聞けますし、人の熱量を直接感じられるのでうれしいですね。
——画面越しではない、普段の仕事では見えないものが、そこにはあると。
はい。「なんでこんなに熱中しているんだろう」と思えるくらい観客が夢中になってくれているんですよね。試合前から楽しそうに話していたり、好きな選手のグッズを身につけていたり、プレーに一喜一憂したり。見ているだけでこっちも楽しくなりますし、自分もその空気に引き込まれてしまうんです。毎回思うんですよ。どうやったらこんな熱狂をつくれるのかなって。クラブの人も、社内のスタッフも本当にすごいと思います。試合会場に行くたびに「この景色を見せてくれてありがとう」という思いが込み上げてきます。だから、この熱狂は途切れさせたくないんですよね。
——溝口さんも含めて、夢中になっている人がB.LEAGUEの感動を支えているのですね。
社内でもそれぞれが自分の仕事に本気で向き合っていて、バスケットボールを良くしたいという気持ちがすごく強いんです。必要だと思ったらすぐやってみるとか、仕事の判断も早い人が多いですね。でも常に張り詰めているわけではなく、笑い声もよく聞こえてきます。「頑張らなきゃ」より「楽しみながら進化していこう」という感覚の人ばかりなんじゃないかな。自分も大変とは思ったことがないです。そんな雰囲気だからこそ「もっと力になりたい」「もっと便利にできないかな」という気持ちになれますね。その人たちに引っ張られながら、自分ももっと成長して、一緒に前へ進んでいきたいと思っています。その積み重ねで、B.LEAGUEの熱狂も支えていきたいです。
人の挑戦が、新しい景色をつくっていく。
——あなたにとって、B.LEAGUEではたらくとは?
「日進月歩」です。
数年前には諦めていたことが、技術の力によって、今では当たり前のように実現できるようになっている。そんなことも、最近では珍しくないですよね。だから、自分自身も立ち止まってはいられないんです。アンテナを張って変化に追いつきながら、成長し続けたいと思っています。変化が大きいのは、IT技術だけでなく、バスケットボール業界も同じ。両者の変化を「追いつけ、追い越せ」の気持ちで捉えながら、技術をどう活かしていくかを考え続けなければいけない。課題を見つけると「もっと良い方法はないかな」と考え始めてしまって、気付けば時間が過ぎていますね。
——溝口さんのキャリアもまさに日進月歩だなという印象を受けました。そうして走り続ける原動力もまた、「おもしろいから」なのでしょうね。
たぶん、そうなんだと思います(笑)。自分が没頭できるものや、先を追いかけたくなるものに身を置いていたいんです。今はそれがB.LEAGUEですね。
——次は、どんな変化を楽しみたいですか?
この先も熱狂を生み続けていくためには、リーグもクラブも進化し続けなければなりません。そのためにIT技術を活用して、人が本来やるべきことにもっと時間を使える環境をつくっていきたいです。クラブやB.LEAGUEの皆さんには、「どうしたらもっとバスケットボールを楽しんでもらえるか」を考えることに時間を使ってほしいです。その方がB.LEAGUEはもっとおもしろくなりますよね。そこでどんな挑戦が生まれて、どんな熱狂につながるのか。自分も夢中になって、未来に向けて進んでいきたいと思っています。
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interview & text:南部望/dodaSPORTS編集部
photo:冨田峻矢
※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。





















