苦手も失敗も乗り越えてこられたのは、「割と好き」な故郷だから│B.LEAGUE仕事図鑑
沢田 亜美さん
秋田ノーザンハピネッツ株式会社 ファンサービス部 ファンクラブグループ
秋田県潟上市で生まれ育ち、地方銀行勤務を経て秋田ノーザンハピネッツに入社した沢田 亜美さん。現在はチームを支えるファンクラブの企画・運営を一手に担っている。
秋田という場所だからこそ、経験のない仕事にもくじけることなく、熱いファン・ブースターの期待に向き合い続けてこられたという沢田さん。地方都市の例に漏れず、若者の転出率が高く人口減が深刻な秋田で、彼女が見出した「地元ではたらく」ことの魅力とは。
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上京ではなく、選び続けたのは生まれ故郷での生活
——沢田さんは秋田県潟上市出身で、今も地元にお住まいです。生まれ育った町はどのようなところですか?
潟上市は秋田市のちょうど真上に位置するところで、住宅街もあれば田んぼもあり、自然も豊かな地域です。ゆったりした雰囲気があって、近所の人はみんな顔見知り。小さいころから通学路で近所のおじいちゃんおばあちゃんが挨拶をしてくれた記憶があります。郷土愛かはわかりませんが、割と好きですね。
——進学先も秋田県内の学校を選ばれたと伺っています。上京は選択肢にありませんでしたか?
友達は大学や専門学校に進学するにあたって、県外に出る人が多かったです。私もアイドルが好きで、ライブのために仙台や東京、大阪に遠征する機会もありましたし、親元を離れて都会で学生生活を送ることに憧れはありました。でも、当時はやりたいことがあるわけでもなかったし、学費や生活費を考えても地元にいるのが一番だと考えたんです。
——県内の大学を卒業後、県内の地方銀行に就職します。就活でも、選んだのは秋田でした。
就活では首都圏の企業も受けていたんです。が、その時期はコロナ禍の真っただ中で、面接はすべてリモート。会社見学もできず、東京に行くこともできない状況でした。とにかく地元を出たい、というわけでもなかったですし「いったん地元に残ろう」という感じです。「マニュアルベースで、やるべきことが決まっている仕事が向いている」と自己分析して、安定した地方銀行勤務の道を選びました。
行員時代は、窓口業務からスタートして、融資係や営業係を担当しました。お客さまに金融商品のご紹介をする機会もあり、ご指名で会社関係の保険見直しのお話をいただけたときはうれしかったですね。
——今の業務とは大きく仕事内容が違いそうですが、秋田ノーザンハピネッツとの出会いは?
友人に誘われて試合を見に行ったことが何度かありました。満員のアリーナを見て「秋田でこんなに人が集められるなんてすごいな」と思っていました。金融を離れて新しい仕事をしたいと思っていたタイミングで、転職サイトにあった秋田ノーザンハピネッツの求人を見つけたときにそれを思い出し、私も「楽しませる仕事」に関わりたいと考えたんです。
「向いている」とは真逆の仕事への挑戦
——入社後は、どのようなお仕事をしていますか?
秋田ノーザンハピネッツのファンクラブ全般に関わる業務を担当しています。具体的にはファンクラブの特典やプランの企画設計を考えること、入会の手続きや管理、グッズ制作やイベント企画などですね。
私が入社した当時から、秋田ノーザンハピネッツのファンクラブはプランの種類が多いんです。プラチナからゴールド、レギュラー、エントリー、学生とジュニア会員まで、幅広くライフスタイルに合わせて選択ができるようになっています。
2026-27シーズンの会員特典。新鮮な気持ちで応援してもらえるよう工夫を凝らしている[画像]秋田ノーザンハピネッツ株式会社
——とても幅広い業務を担っているんですね。
特典の内容も毎年工夫を凝らしていて、今シーズンはどういった内容にするのかを考え、上長や社長の許可を得ながら実行に移しています。2026-27シーズンではこれまでのグッズ中心の特典に加えて、選手との集合写真やオンラインのトークショーなど、体験重視のラインナップを企画しています。
例えばプラチナ会員では、オリジナルパーカーやユニフォーム、選手の直筆サイン入りパネルといったグッズのほか、参加確約のオンライントークショーや限定イベントの優先参加権、観戦後のメモリーフォトの参加といった特典がついてきます。各ランク共通特典では、ファンクラブ限定タオルや秋田市開催のホームゲーム先行入場権、観戦チケットの先行購入権のほか、来場ごとにポイントが貯まって、限定グッズと交換できる仕組みもあるんです。
——企画や制作に携わる仕事は、前職とはかなり勝手が違ったのでは?
本当に、経験のない業務ばかりです。イベントの企画などもゼロから考えることが多く、マニュアルはありません。新卒のころ「私に向いている」と自己分析していた仕事とは真逆ですね(笑)。ただ、ファンクラブの全般を任せてもらい、責任ある仕事ができているのは、とてもありがたいと思っています。
——どのような思いで仕事に臨んできましたか?
ファンクラブの運営は、常に新しいことを考えなければいけない仕事です。配属時は「好きにやっていい」と言われましたが、どうすればいいのかがわからない……。失敗もたくさんしました。今は、熱い皆さんに価値あるものをお返しすること、それがファンクラブの役割だと思っています。
ファンクラブは基本的に生活に必須ではありません。それなのに、お金を払って応援をしてくれている。それに少しでもお返しをしたい、楽しんでもらいたいというのが、企画を考えるときのポイントですね。
ファンクラブイベントは、選手との距離の近さが魅力
オフの選手たちと交流ができるファンクラブイベントでは、秋田らしさも盛り込んだ企画を実施している[写真]秋田ノーザンハピネッツ株式会社
——体験型の特典を増やしているというお話でしたが、どういった狙いがあるのでしょう?
新しい企画を増やすのは、2026-27シーズンからB.LEAGUE PREMIERに参入するにあたって、改めて皆さんにチームのファン・ブースターになってもらうためです。ファンクラブのアカウントが刷新されることもあって、一からのスタートというつもりで、それぞれの意思でチームを好きでい続けてもらえるように取り組んでいます。
また、すでにさまざまなグッズが出ているので、モノより体験の方が皆さんに喜んでいただけるという点も大きいです。これまでも試合が行われないバイウィーク期間にファンクラブ会員向けのイベントを行っていて、選手に直接質問をしたり、一緒にビンゴを楽しんだりできる機会が大変好評をいただいています。特にお食事会は、秋田ノーザンハピネッツの子会社が運営している「道の駅岩城 アキタウミヨコ」を会場に、料理長さんが握ったおいしいお寿司を食べながら選手と交流できるというもので、かなり人気があるんです。
イベント会場にもなる「道の駅岩城 アキタウミヨコ」。秋田を盛り上げるのはコートの中だけではない[写真]秋田ノーザンハピネッツ株式会社
——選手と交流できる機会を設けて、ブースターの心をしっかりつかんでいるんですね。
ファンクラブのイベントとは別に、毎年8月2日(秋田ノーザンハピネッツの日)にも、選手との交流イベントを実施しています。選手の移籍などをきっかけに初めて参加していただいたバスケットボールファンの方からは「こんなに選手と距離が近いイベントは初めて」と感想をいただくこともあって、それが私たちの強みなんだと感じています。
アキタウミヨコの砂浜で選手とレクリエーションができるファンイベントも開催されている[写真]秋田ノーザンハピネッツ株式会社
——秋田ノーザンハピネッツのファンは、試合での熱狂的な応援も特徴的ですね。
アウェーの会場でも、ピンクのユニフォームに身を包んだブースターが数多く来場されます。ファンクラブイベントを告知するときも、皆さんのお申し込みが早く驚いています。
もともと秋田ノーザンハピネッツは、ゼロから立ち上がったクラブです。だからこそ、秋田の方々に寄り添った存在であることを目的としていて、2011年に行った県民球団宣言でも「ブースター主義」を掲げています。実際にイベントなどの現場での皆さんの笑顔や、スタッフと同じくらい早く会場について楽しみにしている様子を見ると、手ごたえを感じますね。
やるしかないから起き上がる。強さを支える故郷の安心感
——沢田さんにとって、B.LEAGUEではたらくとは?
思い浮かぶのは「七転八起」ですね。仕事への取り組み方でもあるのですが、苦手だと思っていた仕事でも、たくさん失敗をしても、何度でも挑戦していくこと。失敗してつらいと思ったときにも、とにかく「やるしかないから起き上がる」って感じです。
私の場合、入社して1年目は正直つらかったですが、2年目には失敗を繰り返さないように行動ができるようになりました。そこからは気持ちが楽になって、一年間の仕事の流れがつかめるようになったと感じています。
——つらかった時期を乗り越えられた秘訣はありますか?
「秋田ではたらいている」という安心感があったことかもしれません。家族も友人もすぐ近くにいます。何かあったり落ち込んだりしたとき、すぐに相談できる相手がここにはたくさんいるんです。私は自然の中で過ごすのが好きなので、休日は温泉に行ったり花の名所へ出かけたり、気分転換ができるのもいいですね。
——故郷である秋田での仕事だからこそ、ハードな仕事にも向き合えているんですね
東京で同じ仕事をしていたら、くじけていたかも(笑)。秋田は都会に比べたらイベントもないですし、遊ぶところも少ないですが、私にとっては魅力的な場所。そこに秋田ノーザンハピネッツという「楽しさ」を提供していきたいと思っています。
——ファンクラブとして、今後の展望や目標はありますか?
まずはB.LEAGUE PREMIERでも多くの方に応援していただける企画を立てていきたいです。まだ発表できる段階ではないですが、これまで以上に選手との距離が近かったり、オフの姿が垣間見えたりするような機会を提供できたらいいなと思っています。
熱量高くチームを支えてくれる皆さんに、ゲームの外で価値ある体験をお返ししていけるように頑張っていきます。
interview & text:小南 恵介/dodaSPORTS編集部
photo:加藤タケトシ
※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。





















