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年間200回以上の地域活動。高知ファイティングドッグス流「地域に愛されるチーム」のつくり方

高知県スポーツ特別対談

高知ファイティングドックス 佐々木 斗夢さん × パーソルキャリア株式会社 小松 剛

高知ファイティングドッグスのホームタウン、高知県越知町。取材当日はあいにくの雨となり、練習場所はグラウンドから町民会館へと変更になった。それでも室内には選手たちの大きな声が響き、終始明るい雰囲気に包まれていた。

「試合でも練習でも、後ろ向きな空気はつくらないようにしています」そう話すのは、高知ファイティングドッグスの監督兼選手・佐々木斗夢さん。北海道出身の佐々木さんは、人との縁をきっかけに高知へ移り住み、今では地域と深く関わりながらチームを率いている。

なぜ高知だったのか。地域とともに歩む独立リーグだからこそ見えたはたらき方や暮らし方とは——。高知県スポーツ案内人を務める小松剛が話を聞いた。

Index

    「高知に来て、地域との距離の近さに驚きました」

    佐々木 斗夢(ささき・とむ)さん
    高知ファイティングドッグス 監督 兼 選手

    北海道から高知へ。人との縁をきっかけに新たな挑戦を続ける佐々木斗夢さん。[写真]吉沢 大和

    北海道札幌市出身。北照高校、立正大学を経て、2020年に栃木ゴールデンブレーブスへ入団。2024年に高知ファイティングドッグスへ移籍し、野手コーチ 兼 選手を務める。2026年より監督 兼 選手に就任。現在はチームを率いる傍ら、地域活動や企業・地域との関係づくりにも積極的に取り組んでいる。

     

    「スポーツを通じて、高知県の魅力を伝えたい」

    小松 剛(こまつ・たけし)
    パーソルキャリア株式会社
    プロダクト&マーケティング事業本部 スポーツビジネス推進グループ
    高知県スポーツ案内人

    スポーツを通じて高知県の魅力を発信する小松。高知県スポーツ案内人として地域の声を届ける。[写真]吉沢 大和

    高知県室戸市出身。室戸高校を経て法政大学へ進学し、卒業後はドラフト3位指名で広島東洋カープに入団。現役引退後は球団職員として8年間勤務した後、パーソルキャリア株式会社へ入社。現在はスポーツ人材のキャリア支援に携わる傍ら、「スポーツを通じて高知県の魅力を伝える」をテーマに、高知県スポーツ案内人として活動している。

    背中を押してくれたのは大先輩。「前向きなチーム」を目指して

    高知にゆかりのある二人が「スポーツ」と「地域」をテーマに、高知の魅力について語り合う。[写真]吉沢 大和

    小松 本日は練習を見学させていただき、ありがとうございました。あいにくの雨でしたが、雨の日は特に工夫して練習されているんですね。

    佐々木 そうですね。町民会館での練習だとバッティング練習ができませんし、使えるスペースにも限りがあります。だから雨の日はアイデア勝負みたいなところがあります。限られた環境の中で何が一番効率的かを考えながらメニューを組んでいます。

    小松 練習を見ていても、スペースの使い方が難しそうだなと感じました。

    佐々木 そうなんです。だからトレーナーやヘッドコーチと相談しながら、その日の状況に合わせて内容を決めています。今の形も、いろいろ試した結果たどり着いたものですね。

    小松 なるほど。本日はそんなチームづくりのお話に加えて、佐々木さんご自身のキャリアや、高知ファイティングドッグスと地域とのつながりについても伺えればと思っています。また、スポーツという切り口から、高知ではたらくことや暮らすことの魅力についても発信できればと考えています。

    佐々木 よろしくお願いします。

    小松 まずは高知へ来ることになった経緯から教えてください。北海道出身で、選手としては栃木で活躍、そして高知へと環境が大きく変わってきましたが、不安はありませんでしたか。

    佐々木 不安はほとんどありませんでした。決め手になったのは、人との縁です。大学時代にお世話になったヘッドコーチの弟さんが高知ファイティングドッグスのチーム強化育成統括ディレクターを務めており、以前から高知に親近感を持っていました。そんな巡りあわせがある場所だったので「面白そうだな」と思ったんです。さらに、栃木時代に4年間一緒にプレーし、大きな影響を受けた川﨑宗則さん(※)から学んだ「まず挑戦してみる」という考え方も、自分の決断を後押ししてくれました。コーチ兼選手として加入したので、選手としてプレーを続けながら指導者としての経験も積める。その点も、新しいキャリアの選択肢として魅力を感じていました。

    (※)川﨑宗則(かわさき・むねのり)
    福岡ソフトバンクホークスのほか、米大リーグのシアトル・マリナーズやトロント・ブルージェイズなどでプレー。明るいキャラクターと高い野球技術で人気を集めた。現在は栃木ゴールデンブレーブスでプレーしている。

    移籍のきっかけの一つとなった、高知ファイティングドッグス チーム強化育成統括ディレクターの青木走野さん(右)と佐々木さん(中央)。名前の響きから「トム」・「ソーヤ」みたいですねと話す場面も。(本人談)[写真]吉沢 大和


    小松
     人との縁や、新しいキャリアへの挑戦が高知を選んだ理由だったのですね。現在は、監督兼選手という立場ですが、チームづくりで大切にしていることはありますか。

    佐々木 試合中は、絶対に後ろ向きな空気をつくらないことです。ミスは必ず出ますが、引きずるとチーム全体に伝わってしまうので、反省は試合後。試合中は切り替えて、クラップしたり声を出したりしながら、選手を前向きに送り出すことを意識しています。そう考えるようになったのは、ムネ(川﨑宗則)さんの存在があります。ムネさんは「前向きにさせるプロ」で、自分もその影響を受けているんです。ファンの方から「チームが明るくなった」「元気になった」と言っていただくことも増えました。今でも「ムネさんだったらどうするか」を意識しながら選手と向き合っています。

    小松 プレーだけでなく、人としても影響を受けたんですね。確かに今日の練習を見ていても、チーム全体に明るい雰囲気を感じました。

    監督兼選手としてチームを率いる佐々木斗夢さん。練習中も積極的に声をかけながら選手たちを鼓舞する。[写真]吉沢 大和

    高知で暮らして見えてきた、人と自然の魅力

    小松 暮らしの面で感じたことや、実際に住んでみて分かった高知の魅力について教えてください。

    佐々木 当時は越知町の寮に住んでいたのですが、ナイターが終わって帰る頃には周りのお店がほとんど閉まっていて、夜ご飯を食べる場所にはちょっと困りましたね(笑)。ただ、高知市内に出ると雰囲気はまったく違いました。活気のあるお店も多いですし、お酒が好きな方も多くて、人との距離がすごく近い。暮らしていくうちに、高知ならではの温かさや居心地の良さを感じるようになりました。

    小松 高知の魅力を知っていただけてうれしいです。人との距離が近いことは、居心地の良さにつながりますよね。

    佐々木 高知の魅力を聞かれたら、自然や食もありますが、まず「人」が思い浮かびます。本当に明るくて面白い方が多いと思います。営業先や地域のイベントなどでお会いする方々も温かく受け入れてくださいますし、そうした人とのつながりは高知ならではだと感じています。

    小松 プライベートではどのように過ごしていますか?

    佐々木 休日はサウナに行ったり、夏になると川へ遊びに行ったりしています。海もきれいですが、個人的には川が好きですね。水が冷たくて気持ちいいですし、アユが泳いでいるのを見ながら過ごす時間も好きです。自然との距離が近くて、気軽にアウトドアを楽しめるのも高知の魅力だと思いますし、そうした環境も含めてすごく気に入っています。

    ユニフォームに並ぶ数々のスポンサーロゴ。地域企業や団体に支えられながら、高知ファイティングドッグスは活動を続けている。[写真]吉沢 大和

    卵や野菜の差し入れが届く球団

    小松 高知ファイティングドッグスは、地域との距離がとても近いチームと伺っています。

    佐々木 本当にそうですね。例えば、地域の方から卵や野菜をいただくことがあります。選手は体づくりのためにたくさん食べるので、とてもありがたいですね。ほかにも四万十鶏や「ゆず卵」など、高知らしい食材を差し入れていただくこともあります。アスリートにタンパク質は欠かせないですし、地域の皆さんに支えていただいていることを実感します。そうした応援が選手たちの力になっています。

    小松 まさに地域ぐるみでチームを応援してもらっているんですね。そうした地域とのつながりを、監督としてはどのように広げていきたいと考えていますか。

    佐々木 自分の中では、監督兼選手でありながら、営業担当のような気持ちも持っています。移動中にスポンサー企業さんの近くを通ればご挨拶に伺うこともありますし、ユニフォームを車に積んでいるので、そのまま訪問することもあります。

    小松 自分から地域へ足を運ぶことを大切にされているんですね。

    佐々木 そうですね。地域活動やスポンサー企業への訪問を通じて、野球をしているだけでは出会えなかった方々と知り合う機会がたくさんあります。室戸で試合がある時には、地元の漁師さんと食事をご一緒させていただくこともあるなど、地域へ出ていくことで新しい出会いがどんどん広がっていくんです。それも高知らしい魅力だと思いますし、応援してくださる方が一人でも増えるのであれば、自分からどんどん動いていきたいですね。

    小松 そうした関わりの一環として、選手の皆さんが地域イベントや野球教室に数多く参加されていると伺いました。実際にはどのような活動をされているのでしょうか。

    佐々木 野球教室はもちろん、地域の運動会やお祭り、ストラックアウト、田植え、芋掘り、生姜農家のお手伝いなど、本当にさまざまなイベントや活動に参加しています。年間200回以上もあると聞いたときは、僕自身も驚きました(笑)。ここまで地域との接点が多いチームは初めてでした。選手が地域へ出ていく機会が多いからこそ、自然と応援してくださる方との距離も近くなる。今ではそれが高知ファイティングドッグスの大きな特徴であり、魅力だと感じています。

    地域の子どもたちを対象にした野球教室。選手たちは競技の楽しさを、直接伝えている。[写真]提供

    グラウンドを飛び出し、田植えにも挑戦。ユニフォーム姿のまま地域活動に参加するのも、高知ファイティングドッグスならでは。[写真]提供

    清掃活動に参加する選手たち。日頃から地域の一員として、まちづくりにも積極的に関わっている。[写真]提供

    スポーツが生み出す感動を、高知の力に

    小松 ここまで地域とのつながりについて伺ってきましたが、佐々木さんご自身は、スポーツの持つ力をどのように捉えていますか。

    佐々木 独立リーグでもNPBでも変わらないと思うのですが、スポーツって人に感動を与えられる数少ない仕事だと思うんです。例えば、球場に来てくださるおじいちゃんやおばあちゃんが、試合を見て元気になったり、「また来たい」と思ってくれたりする。それはすごく大きな価値だと思っています。

    小松 地域の皆さんの生きる力になっているんですね。

    佐々木 そうですね。だからこそ、最後まで諦めずにプレーすることや、全力で走ること、生き生きとプレーすることを大切にしています。そういう姿は必ず誰かの心を動かすと思っていますし、その積み重ねが地域とのつながりや、高知ファイティングドッグスへの応援につながっていくと思っています。

    地域に愛されるチームを目指し、日々鍛錬を重ねる高知ファイティングドッグスの選手たち。


    小松
     最後に、チームとして、そして監督としての目標を教えてください。

    佐々木 まずは高知ファイティングドッグスから、もっと多くのプロ野球選手を輩出したいと思っています。選手たちが次のステージへ進める環境をつくることは、監督としての大きな役割だと思っています。その一方で、地域の皆さんに応援され続けるチームでありたいという思いもあります。高知ファイティングドッグスをきっかけに野球を好きになってくれる人が増えたり、地域が少しでも元気になったりすることが理想です。野球を通じて高知に貢献できるよう、これからも挑戦を続けていきたいと思っています。

    小松 高知ファイティングドッグスが地域に支えられ、地域とともに歩んできた理由がよく分かった気がします。本日は貴重なお話をありがとうございました。

    佐々木 ありがとうございました。

    text:川添 彩香/dodaSPORTS編集部
    photo:吉沢 大和

    ※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。

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