【現役チアリーダー座談会】チアと仕事へのプロ意識は、“チア愛”から生まれた
Nonoさん Narumiさん Sayakaさん
OrientalBioシルバースターチアリーダー
日本社会人アメリカンフットボールのトップリーグ「Xリーグ」で常に会場を盛り上げ、選手にエールを送るチアリーダー。試合が劣勢でも笑顔で選手と観客を鼓舞し、試合終盤も疲れを感じさせないほど元気で、裏にある努力を感じさせない。
今回お集まりいただいたのは、シルバースター専属チアリーダー、Narumiさん、Sayakaさん、Nonoさんの3名。チアに多くの時間と労力を費やす一方で、仕事も手を抜かず精力的に取り組んでいる。全力な姿から、多くの人が抱くであろう“かわいい”イメージを超えた、“かっこいい”姿にその印象が変わるはず。多忙な日々を前向きに過ごす彼女たちの原動力、「チアへの一途な想い」に迫る。
Index
爽やかなダンス、アクロバティックな技の詰まった応援を届けるシルバースターチアリーダー[写真提供]OrientalBioシルバースターチアリーダー
今回参加いただいたOrientalBioシルバースター専属チアリーダーの皆さん
-
Narumiさん
バイスキャプテン/ボイスリーダー/在籍2年目
大学時代、チアリーディング部に所属。ユナイテッド スピリット アソシエーション ジャパン(USAジャパン)開催の競技大会で大学生部門1位の実績を持つ。
-
Sayakaさん
在籍4年目
高校生からチアダンスを始め、大学サークル、社会人クラブチームを経て、2021年にシルバースターへジョイン。バイスキャプテンの経験もあり。
-
Nonoさん
在籍3年目/ボイスリーダー
高校の部活でチアリーディングを開始。大学卒業後も社会人クラブチームでチアを続け、出場した競技大会では、社会人部門第2位を獲得。
完璧なパフォーマンスが生まれるまで
———シルバースターのチアリーダーは、組体操のように人を肩に乗せたり、空中へ高く飛ばしたりするスタンツという技術が特徴的ですね。練習はどれくらい行っているのですか?
Narumi 練習は基本的に平日1回、土日1回。平日に集まれる人だけで自主練習も行います。シーズンが始まると土日どちらかが試合のため週3日稼働になるときもありますね。仕事で都合がつかない人がいれば、練習時間や自主練習の内容を調整します。
———練習の進め方や内容についても教えてください。
Nono チアの専属コーチはいないので、練習はメンバーで役割分担をして進めています。Sayakaはダンスの基礎を教える係で、Narumiは筋トレ係。係の担当は、本人の得意分野に合わせて決めます。私はアクロバティックな技を行うチアリーディングを専門的にやってきたので、スタンツの技術練習をリードしています。
Narumi 筋トレはボディメイクと体力づくりを目的としており、それぞれで適切なメニューを考えます。炎天下で踊りっぱなしでも完璧なパフォーマンスを披露するには体力が必要ですからね。練習外でもメンバー同士LINEで筋トレ動画や食事内容、ダンスでよく使う部位の効果的なストレッチ方法などを共有しています。
体幹を使い、迫力のある技を次々と繰り出す。本番でミスのないよう入念に準備[写真撮影]中野賢太
———パフォーマンスはどのように作っていくのですか?
Sayaka 全体の構成や使用する曲、振付など全て自分たちで考えます。パートごとに分担し、各自で考えた案を持ち寄って、対面で確認しながら仕上げていく形ですね。今は、ハーフタイムショーで披露するパフォーマンスをNarumi、Nonoと一緒に作っています。いつも足を運んでくれるお客様も新鮮な感覚で楽しめるよう、シーズンごとに構成を進化させています!
———たくさん準備し当日を迎えるのですね。パフォーマンス中、特にこだわっていることはありますか?
Sayaka 個人的には見られている意識を常に持つのがこだわりです。一瞬でも猫背になったり眉間にしわが寄ったりすれば、周りの人に「疲れている」とすぐに伝わってしまいます。それはチアリーダーとしてあってはならないこと。汗を拭くときもなるべく美しい所作にする、口角をあげて姿勢を正すなど、いつも意識しています。
フォーメーション、腕や足の角度、きれいに見える姿勢など細かくチェック(右から二番目・Sayakaさん)[写真]中野賢太
Narumi ポンポンなどのグッズを使った後はきれいにしまったり、静止する場面は本当にピタッと止まったり、所作の細かい部分も意識しています。私のこだわりは、自分の体力や試合の戦況に左右されず、最初から最後まで常にテンションやパフォーマンスの質を高く保つことです。戦況が悪化してお客様が落ち込んでしまったときこそ私たちの出番ですから。
Nono 私も同じく、チアリーダーとしてお手本になれるよう行動しています。表情や姿勢の意識に加えて、パフォーマンスもただ披露するだけではなく、会場全体を自分の声でしっかり巻き込むことを意識的に行っています。チアで試合中の選手やファンの皆さまからの応援を後押しするのと同じように、日々の生活においても身の回りの人たちがより前向きになれるような関わり方をしていきたいですね。
社会人としてチアを続ける難しさ
———練習以外にチアリーダーとしての仕事はありますか?
Sayaka 公式SNSの管理や練習場所の確保、備品管理など事務的な仕事があります。私は公式SNSの運営係をしていて、試合情報やチア活動のお知らせコンテンツを作成し配信しています。チアリーダーの入団希望者の方に体験会などを案内するのも私の仕事。最近、希望者の方は増えていますね!
Nono 私はNarumiと一緒に、練習場所を確保する係をしています。公共施設の体育館や多目的ホールのような場所を借りるのですが、ピラミッドやバスケットトスをすれば高さ3~5mにも及ぶので、天井に余裕が必要となり、場所探しは結構苦労するところです。また、秋シーズンにチームで販売する新しいグッズの企画も担当しています。関係者への連携や販売準備など幅広い業務を分担して行います。
Narumi 私は、対戦チームのチアとの事前打ち合わせや、シルバースターの選手・チアのディレクターとの連携などを行いつつ、チアのチーム全体を取りまとめます。バイスキャプテンを担当しているのですが、今年から始めたばかりで、先輩にはしょっちゅう相談しています。先日ハーフタイムの構成で行き詰まったときも、先輩方に意見をもらったらスッキリ解決しました。抱え込まず、多角的な視点で物事を捉えることが大事だなと実感します。
OG、ディレクターからも意見をもらいながら全員で目線を合わせ、仕上げていく[写真]中野賢太
———チアとしての仕事量は想像以上に多いのですね。平日の仕事もこなしながらとなりますが、普段、どのようなお仕事をされていますか?
Sayaka 私は靴下などのアパレル商品を作るメーカー勤務です。入社3年目までは商品開発部門にいて、現在は海外ブランドとの取引で窓口や調整役をしています。海外経験が長く、自分の語学力を仕事で活かしたいと思っていたのでやりがいを感じますね。
Narumi 私は建築業界で営業をしています。ハウスメーカーや建材メーカーの得意先を中心に、内装や外装で使う素材を販売します。
Nono 私は信託銀行の営業部署に所属し、お客様の世代に合わせた資産形成・資産承継などのトータルコンサルティングを行っています。10名程度のチームでリーダーを任せてもらっています。
———本業の仕事とチアはどのように両立されているのでしょうか?
Sayaka 基本、練習日に合わせて仕事を調整するよう努めますが、やはり急な仕事や残業はあるので、そういう場合はお互いをフォローし合います。事務的な仕事やパフォーマンス作りも、練習と同じように各自の得意分野をもとに係を決めて、複数名で分担し進めていくのですが、練習時間内ではどうしてもやりきれないものもあるので、係ごとにLINEグループを作り、話し合いを進めています。
Narumi ……そういえば以前、Sayakaさんが、出張先のアメリカから「こういう振付はどうかな?」と、ホテルの部屋で踊っている動画を撮影し、送ってくれたこともありましたね(笑)。
Sayaka 皆が夜寝ている時間に、「おはよう」って言いながら送ったね(笑)。
仕事内容について話すNarumi。それぞれ異なる環境がベースにあるからこそ、お互いを配慮し助け合える[写真]中野賢太
———限られた時間内に、数多くの業務をやりきるための工夫はありますか?
Sayaka チーム内のコミュニケーションとスケジュール管理は特に大事にしていますね。「この日、この時間帯に○○タスクを実施」「空いた時間で○○を実施」といった具合に、メンバー同士で細かく予定を共有しています。
Nono なるべく練習では、対面でしかできないことに時間を割けるようにしたいので、会えない時間はオンラインを駆使するのが当たり前になっています。踊る曲やフォーメーション、振付も全部事前に覚えてから練習に向かいます。
Narumi いかに練習の効率を上げるかも大事ですね。短い時間で濃い内容の練習ができるように、反省点などは平日にLINEで共有して、次の練習までに各々直しておきます。改善点は詳細に把握できるよう、練習時の動画を撮影し、全員で気づいたことを直接コメントできるようにしています。
限られた時間の中で、それぞれが得意分野を活かしながら練習を主導(Nonoさん)[写真]中野賢太
———とても効率的に進められていますね。一方で、あまりに量が多かったり、チアと仕事以外のことができなくなったりして、疲れてしまう場面はありませんか?
Sayaka 仕事とチアの忙しい時期が重なると、ちょっと疲れてしまうこともありますね。海外出張の帰りに直接チアの練習に向かったときとか (笑)、チアで課題があるのに仕事の締切も迫っているような状況とかは特に大変ですが、いつもメンバーに支えてもらっています。
インタビュー中も笑顔が絶えない、プライベートでも仲の良いチーム[写真]中野賢太
Nono 得意分野を活かしつつ、分担して協力し合えるのは良い環境だと思いますね。一年中、本当にチアのことばかり考えていますし、オフの時間もメンバーと会っていて、チア尽くしの日々ですが苦に感じることはないです。皆チアが大好きでやっているので。
Narumi 辛くないどころか、練習が私にとってはリフレッシュの時間になっています! 仕事終わりで疲れていても、練習に行けば元気になって帰ります(笑)。
“私”のすべては“チア”を軸に彩られている
———チアとの両立が、仕事へ良い影響を与えることはありますか?
Narumi 会社でよく「職場の雰囲気が明るくなってありがたい」と言ってもらえるんですが、それはチアのおかげだと思います。チアはポジティブなマインドでいることを意識的に行うスポーツなので、それが自分に染み付いて、日常的に体現できているということかなと。
Nono 私は信頼関係の構築に関してチアが活きていると思いますね。スタンツは、アクロバティックで見応えがある反面、危険度も高く、メンバーの命を預かっていると言っても過言ではありません。成功させるにはお互いを理解し信頼関係を築くことがとても大事です。そこで培った経験は、仕事でお客様やチームメンバーとリレーションを築く際にそのまま活かせているなと思います。あとはNarumiと同じく挨拶や笑顔は褒められます(笑)。
スタンツは信頼関係が重要。対話を重ねる過程で社会人としても重要なコミュニケーションスキルが身に付くという[写真]中野賢太
Sayaka 私は一昨年、バイスキャプテンをしていた際、相手に伝えたいことをきちんと理解してもらうにはどうすれば良いかをじっくり考えた時期がありました。そこで、話すトーン・言葉選び、伝える内容の粒度などは、相手の性格や場面によって細かく使い分けた方が良いということを学んだので、仕事でも意識的に行うようにしています。
———今後はチアとどのように関わっていきたいですか?
Sayaka チアが本当に大好きなので、チアリーダー1本でやっていきたいと考えるときもあります。パフォーマンスをする側か、教える立場かなどは未定ですけど。でも一方で、仕事を頑張りたい気持ちもあり、チアと仕事の両立も良いなと迷います。仕事の重要な場面で得意な英語を使い、交渉などをしていると、「自分の強みを活かしてしっかり会社へ貢献できている」という実感があり、嬉しくて。もっと成長して幅を広げたいとも思います。
Narumi 私は、スポーツと英語をテーマに仕事をしていきたいです。海外経験はないですが、英語を使って仕事がしてみたいので、電車移動中にビジネス英語を勉強したり、今住んでいるシェアハウスで海外出身の方と日常的に英語で話したりしています。スポーツは、私が今までの人生でずっと何かしら関わってきたので、活かせたらなと。それがチアだったら最高ですね。
炎天下34度の空の下でも表情管理を徹底し、最大の笑顔で練習に臨む(Narumiさん)[写真]中野賢太
Nono 私は、仕事とチアは分けて考えています。仕事は今のまま続けていきたいし、チアは高校から続けている私の核となる部分なので、辞めることは考えられません。
今後もチアとアメフトに長く関わっていけたらなと思います。なぜアメフトもセットかというと、実は私の父と弟がアメフトの選手でして、自分もアメフトに関わりつつチアリーディングをやりたいという気持ちがずっとあったんです。ようやくその思いがシルバースターで叶った形です。
チアリーダーが、チアに魅了され続ける理由
———これだけ皆さんを魅了するチアの一番好きなところは何ですか?
Sayaka 私はダンスが特に好きです。踊っている途中に皆と目が合う瞬間や、ラインダンスの場面でメンバーの体に直接触れたとき、「皆と一緒にいる」ということを強く実感できるんです。すると、どんなに疲れていても「よし、頑張ろう」とすごく前向きな気持ちになれて。チアっていいなと思います。その感覚が癖になってしまっています!
Nono 私もチアが楽しくて仕方ないです。皆で物理的につながり、お互いの体温や鼓動を感じながら息を合わせて1つの技を作り上げること。そして、一緒に踊っている仲間、自分の声掛けで盛り上がってくれる観客の皆さん、躍動する選手たち全てを見渡せる圧巻の景色があること。これらから得られる感動は忘れられません!
「チアが本当に好きだから、練習も仕事との両立も大変で嫌だと思ったことはない」(Nonoさん)[写真]中野賢太
Narumi わかります! たくさん練習や準備を重ねてパフォーマンスを披露した結果、お客様に楽しんでもらえて、選手にもエールを届けられていると実感できたとき、すごく情景がキラキラして見えますよね。私もそれがすごく好き! 同時に、応援する側である自分たちが引き立ててもらえている感覚もあります。自分自身をチアアップしながら、お客様もチアアップできている証拠かなと思います。
Nono 会場にいると自然に笑みがあふれてきますね。もちろんチアとして表情の管理もしていますけど、楽しくて自然と笑顔になってしまいます。
Narumi 本当にしんどいときに自分が一番笑顔でいなきゃと、自らを奮い立たせるときもありますが、それはそれで生きている感じがして楽しいです(笑)。ボルテージが上がっているんだと思いますが、それをチームの皆と一緒に共有できるのが本当に幸せです。
Sayaka 大好きなチームで一丸となり披露したパフォーマンスによって、お客様に喜んでもらえて、選手を応援できて、さらに自分自身も楽しめる。これらの要素が詰まったチアが、皆ただ純粋に大好きなんです。メリットがあるかじゃない。まだまだずっとやっていきたいなと思います。
interview & text:森本綾乃/dodaSPORTS編集部
photo:中野賢太
※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。










