新球場での求人を目にして「すごいことが始まる」と胸が高鳴った │パ・リーグ球団 仕事図鑑2024
齋藤 裕太さん
北海道日本ハムファイターズ ボールパーククリエーション統括部 ファシリティマネジメント部 部長
パ・リーグ各球団で活躍する球団職員の皆さんに、現在携わっているお仕事内容とそれぞれの転職にまつわる経験談を伺いました。転職理由を掘り下げることで見えてきた、やりがい、情熱、夢…そこには、独自のキャリアストーリーがありました。
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齋藤 裕太(さいとう・ゆうた)さん
北海道日本ハムファイターズ
ボールパーククリエーション統括部
ファシリティマネジメント部 部長
兼 ボールパークマネジメントグループ グループ長
前職:自動車業界
新球場プロジェクトに惹かれて転職を決意
私は北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」の施設管理・運営を担当しています。12社のパートナー企業と力を合わせて、建物や設備などのハード面の管理から、エネルギー、物流、警備、清掃、空調、除雪、駐車場の運営を通じ、選手に快適なプレー環境を、お客さまに快適な観戦環境をお届けするのが仕事です。
グラウンドの天然芝のメンテナンスもその一つです。芝生の生育には日照が不可欠なので、エスコンフィールドの特徴の一つである開閉式屋根をフル稼働させて日照を確保しています。冬は降雪の関係で屋根を閉めるため、太陽の代わりになる特殊な照明装置や芝生の下に埋まっている温度コントロールシステムを使って生育しています。
現在、最も力を入れているのが施設管理のDXです。ファイターズは2024年で50周年を迎えたのですが、これまでは球場を試合開催日だけお借りする賃貸モデル。球場を所有するのはエスコンフィールドが初めてでした。なので、最初はできる限り人の手で施設を動かしてみて「球場を持つこと」の現実を知り、施設管理のボトルネックを探ることに注力しました。1年間運営してみてさまざまな課題に直面しご迷惑をおかけすることも多々あったのですが、いまでは所々でAIカメラやセンサーなどのテクノロジーも駆使しながら、人と機械の強みを融合し体験価値の向上や施設運営の効率化に努めています。
前職は大手自動車会社で調達の仕事をしていました。一般的に1台のクルマは約3万点の部品からできていると言われているのですが、その多くは部品サプライヤーさんに作っていただいています。その中での調達の役割は、必要な部品をどのサプライヤーさんからいくらで購入させていただくのかを判断し、プロジェクト予算や供給のマネジメントをすることです。途中、欧州に駐在するなど計13年間携わっていました。やりがいがある仕事でした。
ただ、2019年夏に新球場プロジェクトの求人を偶然目にして、「これはすごい」と胸が高鳴ったんです。実は小学校から高校まで野球をしており、この求人を見て野球が好きな気持ちを思い出しました。人生のターニングポイントになる求人でした。
球場を「工場」に見立てて運営
今、前職の経験がすごく役に立っています。なぜかと言うと、工場と球場の運営はすごく似ているからです。
工場ではより良いクルマ作りに向けて多くのサプライヤーさんと一緒に課題を洗い出し改善を繰り返す。生み出される商品がハードかソフトかという違いはあるものの、球場での課題解決アプローチも一緒です。いくつか近郊の工場を見学させていただいているくらい参考にしています。また最近、球場は駅にも似ていると考えるようになりました。
多くの人が行き交う交流拠点であることやラッシュアワーがあること、チケットで改札を通って入場することなど共通点が隠れています。実は球場内には屋根を動かすためのレールも敷かれているんです。鉄道会社から駅運営のノウハウも教えていただいています。
「現場」が近い最高の職場環境
このように他業界やそこで出会った方々からも刺激を受けながら、より良い施設運営を模索しています。その中で大切にしているのが「三現主義」という言葉です。前職の会社には「現場・現物・現実を大切にせよ」という教えがあり、私の仕事への向き合い方の原点になっています。普段私が働いているオフィスは球場の中にあり、「三現主義」を実践しやすい最高の環境です。お客様にまた来たいと思っていただける施設にするためにはハードだけでなく、運営面なども進化し続けることが大切です。現状としっかりと向き合い、ありたい姿とのギャップを埋めるため、日々挑戦と改善を進めています。
interview & text:木崎伸也
photo:上原未嗣
※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。










