データに基づいたマーケティングで自分らしい挑戦を続けたい │パ・リーグ球団 仕事図鑑2024
正田 直也さん
北海道日本ハムファイターズ 事業統轄本部 コンシューマー統括部 マーケティング部 部長
パ・リーグ各球団で活躍する球団職員の皆さんに、現在携わっているお仕事内容とそれぞれの転職にまつわる経験談を伺いました。転職理由を掘り下げることで見えてきた、やりがい、情熱、夢…そこには、独自のキャリアストーリーがありました。
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正田 直也(しょうだ・なおや)さん
北海道日本ハムファイターズ
事業統轄本部
コンシューマー統括部
マーケティング部 部長
前職:自動車業界
自動車部品メーカーからプロ野球界へ
中途採用というと、前職で培ったスキルを同じ職種で活かす人が多いのではないでしょうか。2020年に北海道日本ハムファイターズに入社したぼくの同期の多くもそうです。ただ、ぼくの場合は少し事情が違いました。
ぼくは大学で経営学を専攻し、卒業後に大手自動車部品メーカーに就職しました。経営管理を担当し、年間の事業目標を決めて各部署の予算編成に落とし込んだり、グローバルの投資戦略を立案したりしていました。
転機となったのはアメリカ駐在です。アメリカで一通りの仕事を経験して帰国するタイミングに、北海道在住の義母から「こんな求人がバズってるよ」と教えてもらったんです。ファイターズが「スギ花粉が少ない!」といった北海道の良さをユーモアたっぷりにアピールして、新球場に向けた中途人材をオープンに募集していました。ぼく自身も北海道出身なので最初は興味本位で応募しましたが、内容を知るほど、「こんなプロジェクトに出会えるチャンスは一生に一度あるかないか」だと思い、ご縁を信じて思い切って飛び込んでみました。面接官の「コアなファンだけでなく、もっと幅広い客層に対して事業展開する」という言葉にも背中を押してもらいました。
初心者だからこそできた挑戦
ファイターズに入社してまず予想外だったのが、出来たばかりのマーケティンググループに配属されたことです。「事業計画の進捗管理で役に立てるかな」と考えていたので驚きました。
マーケティングはまったくの初心者でしたが、前職のおかげで数字に強い自負はあったので、データを活用したマーケティングに力を入れようと思いました。その手段としてぼくが提案したのが、キャッシュレス決済機能「FビレッジPAY」を備えた公式アプリの立ち上げでした。
アプリ制作は外部に委託しなければならず、初期投資が必要になります。上司はゴーサインを出してくれたものの、「ファンの方々にどれだけ使ってもらえるだろうか」と不安を抱いている様子でした。球団内でも当初は懐疑的な声のほうが強かったと思います。
それでもぼくは来場体験に寄り添ったアプリが出来れば、目標の15万ダウンロードは十分達成可能だと見積もっていましたし、経験がない分、シンプルにそれを信じていました。来場した際に必ずすること、かつ時間がかかるのがお買い物=決済です。「FビレッジPAY」はその決済時間を約半分にすることで、お客さまにも、店舗のスタッフさんにも受け入れられ、開業後にアプリの提供が始まってすぐに15万ダウンロードに到達し、現在は35万ダウンロードを超えています。上司から「ダウンロード目標は高過ぎると思っていた。自分の中の固定観念の一つを打破してくれてありがとう」と声を掛けてもらった時に、ようやくこのプロジェクトの一員になれたかなと感じることができました。
反対されても突き進めた理由
こんなに大変だと分かってなかったことは大きいですね(笑)。でも何より反対意見があっても自分が突き進めたのは、「開業に向けてこれだけみんなが何年も準備してきているが、来場される方にとっては一回の来場体験がすべて。その魅力が伝わりきらなかったらもったいない」と思ったからです。Fビレッジの特徴や楽しみ方が一目で分かるガイドが必要だと考え、アプリの仕様に反映していきました。
アプリを通じてボールパークにおける顧客行動のデータを収集できるようになりました。ゆくゆくはFビレッジ以外でも「FビレッジPAY」や「Fマイル」を使えるようにして、そのデータを周辺地域も含めたまちづくりの発展に活かしていきたいと考えています。
前職では企業向けにビジネスをしていたので、ダイレクトにお客さまにサービスを提供するビジネスについては今でも日々学びながら仕事に向かっています。ただし、プロジェクトの目標に向かって関係者で力を合わせていくこと、自分の仕事に魂をこめる大切さは、BtoBでもBtoCでも同じだと感じています。これからも固定概念にとらわれず、自分らしい挑戦を続けたいと思います。
interview & text:木崎伸也
photo:上原未嗣
※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。










