球場を通じて街づくりに参加「ここに身を置けて幸せに感じます」 │パ・リーグ球団 仕事図鑑2024

酒井 恭佑（さかい・きょうすけ）さん

北海道日本ハムファイターズ
事業統轄本部 企画統括部
事業企画部部長 兼
企画グループ グループ長

前職：不動産業界

アートで球場を華やかにする

　「世界がまだ見ぬボールパーク」。北海道日本ハムファイターズの新球場を擁する「北海道ボールパークFビレッジ」はそんなスローガンを掲げて、北海道のシンボルになることを目指しています。野球の枠を越えたさまざまな取り組みをしており、スポーツとアートの融合もその一つです。多摩美術大学出身の私は2020年9月にファイターズに転職して以来、さまざまなアートワークのディレクションに携わってきました。

　例えば新球場の開業に合わせて、レフトスタンドに位置する「TOWER 11」の1階コンコース側壁面にダルビッシュ有選手（※1）と大谷翔平選手（※2）のウォールアートを企画しました。制作者はミューラル（壁画）アートカンパニー「OVER ALLs」。彼らが手がける作品に魅了され、依頼させていただきました。

　2024年に50周年を迎えたファイターズのウォールアートも「OVER ALLs」に制作していただきました。バックスクリーン横の壁面に、ファイターズ初代オーナー大社義規氏や歴代のレジェンド監督・選手たちが描かれています。

　また、1階のVIPエリアにファイターズの選手8人をモチーフにした作品を若手アーティストに描いていただいたり、ほかにも数多くのアートを球場にちりばめています。

前職ではアート系イベントを担当

　実は私が美大に進んだきっかけは、現ファイターズ監督の新庄剛志（※3）さんが現役時代に起用された屋外広告にあります。新庄さんが革ジャンを着て雨に濡れている巨大なグラフィックが札幌市内の商業施設の壁面に登場したんです。めちゃくちゃかっこいいと思い、広告に興味を持って美大に進学しました。

　美大では映像を専攻し、卒業後に広告映像制作会社に就職してファストフードチェーンや自動車会社のテレビCMなどを手がけました。刺激的な仕事でしたが「街づくり」に興味が湧き、六本木にある商業施設に転職します。富士山のオブジェにプロジェクションマッピングを行うイベントを担当したり、海外のクリエイティブ機関と連携して未来を考える学校のプロジェクトを立ち上げたりしました。

　そんなときにファイターズのボールパーク構想に出会い、「街づくりにゼロから参加できるチャンスは二度とない」と思って転職を決意しました。

　ファイターズに入社してまず担当したのは、VIPエリアの内装や球場周辺の植樹計画を含めたランドスケープといったデザインに関わることでした。さまざまな企業と連携しながらプロジェクトをまとめていきました。

行政にも出向し、地域づくりにも参加
　現在は「企画グループ」の責任者としてイベントを主に担当しています。試合がない日にも訪れてもらうのが目的です。これまでにビアフェスや池を使ったSUP（スタンドアップパドルボート）体験、農業と食の祭典、年末年始の球場神社といったさまざまなイベントを企画、実施してきました。

　個人的に思い深いのは盆踊りのイベントです。TRFのDJ KOOさんらに出演していただき、子どもたちに大好評でした。コロナ禍では伝統的な盆踊りが開催されず、子どもたちが夏の風物詩を体験する機会が限られていました。イベントを通して文化継承の一端を担えたことがうれしかったです。

　また、2024年4月からは北海道北広島市に出向して街づくりにも携わっています。街づくりについてのワークショップを開催して参加者に「5年後にどんな街になってほしいか」を話し合ってもらい、それを1枚の絵に落とし込みました。2028年度には北海道医療大学がFビレッジにキャンパスを移転する予定です。ものすごいスピードで成長する街に身を置けていることを幸せに感じています。

（※1）ダルビッシュ 有（だるびっしゅ・ゆう）：1986年8月16日生、大阪府出身。2005年北海道日本ハムファイターズにドラフト1位で入団。2012年1月にポスティングシステムでMLBテキサス・レンジャーズへ移籍し、2021年からサンディエゴ・パドレスに在籍。

（※2）大谷 翔平（おおたに・しょうへい）：1994年7月5日生、岩手県出身。2013年に北海道日本ハムファイターズにドラフト1位で入団。ダルビッシュが着用していた背番号11を受け継いだ。2017年12月にポスティングシステムでMLBロサンゼルス・エンゼルスに移籍し、2024年からロサンゼルス・ドジャースに在籍。

（※3）新庄 剛志（しんじょう・つよし）：1972年1月28日生、福岡県出身。現役時代は2004年から約3年間、北海道日本ハムファイターズでプレー。2022年に監督として古巣に復帰した。