グルメを通じて選手の思いをファンの皆さまに届けたい │パ・リーグ球団 仕事図鑑2024
柴田 麻美さん
東北楽天ゴールデンイーグルス MD・コンセッション部 コンセッショングループ 運営チーム リーダー
パ・リーグ各球団で活躍する球団職員の皆さんに、現在携わっているお仕事内容とそれぞれの転職にまつわる経験談を伺いました。転職理由を掘り下げることで見えてきた、やりがい、情熱、夢…そこには、独自のキャリアストーリーがありました。
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柴田 麻美(しばた・あさみ)さん
東北楽天ゴールデンイーグルス
MD・コンセッション部
コンセッショングループ
運営チーム リーダー
前職:コンビニエンスストア業界
心おどるグルメでスタジアムを盛り上げる
私のモットーは「おいしいは楽しい」。2019年に東北楽天ゴールデンイーグルスに入社して以来、仲間と力を合わせてスタジアムグルメに携わってきました。楽天イーグルスの本拠地「楽天モバイルパーク宮城」には80以上の飲食売店があるのですが、各店舗のみなさんと「どういう商品を販売するか」といったことを作戦会議したり、球団オリジナルの商品を開発したりするのが主な仕事です。
例えば毎年イベントユニフォームに基調色があり、それにあわせて「カラーグルメ」の企画を開催しています。今年のカラーは「潔い深黒」なので、各店舗のみなさんに「スタジアムを黒に染めましょう!」と呼びかけ、真っ黒なイーグルス豚まん・唐揚げ・竹炭を入れたレモンサワーといったさまざまな商品を30種類以上準備しました。場内にどんな看板を立てるか、ビジョンでどんな案内を流すかといった告知も担当しています。
球団オリジナル商品の例を挙げると、2019年に入社してすぐに発案したのがお米を使った「イーグルスチップス」でした。それまでにも素晴らしいオリジナルグルメがたくさんあったのですが、お土産として家に持ち帰れるものはなかったんです。チップスなら持ち運べるし、スタジアムでビールのおつまみにもなる。ファンの方たちに好評をいただき、現在も販売が続いています。
「イーグルス豚まん」もロングセラーになっている商品の一つです。仙台のナイトゲームは5月くらいまで肌寒いので、観戦しながら片手で持てて体を温められるものがあるといいと考えました。そこで楽天イーグルスのロゴを焼印した豚まんを発売したところ、瞬く間にヒット商品になりました。今では4選手の似顔絵がランダムに焼印されたものが販売されています。
選手プロデュースのグルメも担当しています。私たちが目指すのは選手の思いをグルメでファンの皆さまに届けること。アンケートを取ってヒアリングし、意見を交換しながら選手の思いがこもった商品にしていきます。思い出深いのは島内宏明選手(※)発案のバニラシェイク。お弁当の企画を相談しに行ったところ、島内選手から「シェイクはどうですか?僕もシェイク大好きだし、シェイクはみんな大好きだからファンの方にも喜んでもらえると思う。機材が必要なら僕が購入しますよ」と提案があったんです。それを聞いた私たちは選手が本気でお客さまに届けたいメニューを実現するため、急いで商品の準備をしました。そして発売したところ、年間を通しての大ヒット商品になりました。島内選手の思いがファンの皆さまに届いたのだと思います。
ちなみにスタジアムでドリンクを販売する売子たちのプロデュースも手がけており、昨年5月に「売子Night」を開催しました。作成した「売子カード」は、お客さまも売子たちも喜んでくれたのでうれしかったです。
前職では伝説のおにぎりを企画
もともと私はコンビニチェーンに勤め、宮城で店長を約5年務めた後、東京で原材料の仕入れから商品企画、売り場提案、コンビニオーナーの方たちへの仕入れ促進を行っていました。担当した企画で最も反響があったのは「悪魔のおにぎり」という商品です。ご飯にめんつゆ、揚げ玉、天かす、ネギが入ったもので、同レシピを使っていた南極調理隊員の方にご協力いただいてヒット商品になりました。
ただ、日の目を見た商品の陰にはたくさんの失敗があります。コロッケを甘いホットケーキではさんだサンドイッチを4回プレゼンしたのですが、すべて却下でした(笑)。だいたい30分の1くらいの確率。商品開発にはめげない心とチャレンジ精神が大事です。
30代をすぎてそろそろ地元に戻りたいと思っていたときに、楽天イーグルスの飲食担当の求人に出会いました。パ・リーグとセ・リーグの違いすらも分からなかったのですが、前職の経験がまさに活きる仕事だと思い転職を決断しました。飲食店でメニューの端から端まで眺めて、何を組み合わせたら楽しいかを考えるのが習慣になっています。スタジアムグルメの仕事は天職かもしれません。
(※)島内 宏明(しまうち・ひろあき):1990年2月2日生、 石川県出身。2012年東北楽天ゴールデンイーグルスにドラフト6位で入団。背番号35番の外野手。2021年にパ・リーグの打点王に輝いた。
interview & text:木崎伸也
photo:吉森慎之介
※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。










