客観的な方法を活用しつつも主観的な「熱」も大事にしています │パ・リーグ球団 仕事図鑑2024
西本 陽介さん
福岡ソフトバンクホークス 事業統括本部 マーケティング本部 お客様サービス部 ファンサービス課
パ・リーグ各球団で活躍する球団職員の皆さんに、現在携わっているお仕事内容とそれぞれの転職にまつわる経験談を伺いました。転職理由を掘り下げることで見えてきた、やりがい、情熱、夢…そこには、独自のキャリアストーリーがありました。
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西本 陽介(にしもと・ようすけ)さん
福岡ソフトバンクホークス
事業統括本部 マーケティング本部
お客様サービス部 ファンサービス課
前職:Web制作業界
統計的手法で会員数アップ
球団が継続して成長していくうえで、帰属意識が強いファンの存在は極めて重要です。福岡ソフトバンクホークスは公式ファンクラブ「クラブホークス」に力を入れており、おかげさまで有料会員数は15万人(2024年2月時点)を超えました。弊社の調べによると、これはパ・リーグ最多の数字です。
私はファンサービス課の一員として、「クラブホークス」の会員数を伸ばす仕事に携わっています。例えば入会受付サイトの制作がその一つです。入会を検討している方が最初に訪れるページですので、特典やメリットを一目で分かるようにするのがポイントです。
私たちが活用しているのが統計的アプローチです。インターネットのマーケティングでは異なるデザインのページをランダムに示し、より反応がよいものを採用する「ABテスト」という手法があります。「クラブホークス」の年会費をページのどこに載せるべきかについて「ABテスト」を行ったところ、ページ後半より、ページ前半に示した方が入会につながるという結果が出ました。最初に料金を把握した方が安心して検討できるという消費者心理があるのだと思います。そこでスタンダード会員3,980円、ジュニア会員2,750円といった年会費がすぐ目に飛び込んでくるようなデザインにしています。
またアンケートも活用しています。会員のみなさまにアンケートを行ったところ、入会の決め手になっているのは「チケット最大20%オフ」と「グルメ・ドリンク10%オフ」という特典であることが分かりました。ほかにも細かい特典がたくさんあるのですが、やはり割引に勝るものはないのでしょう。お得さをストレートに打ち出すようにしています。
会員募集のキャッチコピーを担当
客観的な方法を活用しつつも、ホークスらしいのは同時に主観的な「熱」も大事にしていることです。球団として「感動の創造」をビジョンに掲げており、上司から「それは本当にお客さまのためになるのか」「もっと新しいアイデアはないのか」と問われる文化があります。いくら見栄えのいいサイトを作っても、球場を包み込んでいる選手とファンの熱が表現できていなければ意味がありません。
そこで2024年の会員募集に向けて打ち出したのが「応援は戦力になる。」というキャッチコピーでした。球場のクラブホークス窓口付近の壁に描かれているので、気がついていただいた方もいるのではないでしょうか。
実はこのフレーズを考えたのは私なんです。試合を見ていると、球場全体から拍手が湧き上がって選手たちを奮い立たせるという場面にたびたび出会います。声援が猛攻を後押しする瞬間を何度も目にしてきました。応援の価値をキャッチコピーに凝縮したいと思いました。
私はホークスに入るまでに2社経験しています。1社目は化粧品通販の会社で、紙媒体やWeb媒体を使って販促を行っていました。お客さまの関心が高まっているときに会員登録の施策を打つといったノウハウを吸収することができました。化粧品の定額制サービスは球団のファンクラブの形態に似ているので、その知識も今活かせています。「ABテスト」といった統計的アプローチにも触れられました。そして2社目ではECサイトの制作会社に勤めて、大手企業のECサイトの立ち上げ支援を担当しました。
そうやって通販業界で経験を積みながらも、いつか子どものころから応援しているホークスで働きたいという思いがありました。ホークスの求人にたまに応募もしていました。専門外の職種だったのでなかなか採用には至らなかったんですが、ついにファンサービス部門の求人が出たんです。「これなら経験を活かせる!」と思って応募したところ、選考を通過することができました。
ホークスの職員数は300人を超え、さまざまな経歴を持つエキスパートが集まっています。今後はそういう人たちを巻き込んで、新たなファンクラブの価値をつくっていけたらいいなと考えています。
interview & text:木崎伸也
photo:松本昇大
※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。










