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スポーツのエネルギーはダイバーシティ推進の鍵になる

村松 邦子さん

WEリーグ理事/Bリーグ理事/日本ブラインドサッカー協会理事

グローバル企業で経営管理、ダイバーシティ推進などの分野でキャリアを積んだ村松さん。Jリーグ理事就任のオファーを機に、スポーツ界の扉を開くことになる。以来、企業への経営アドバイザリーを行いながら、複数のスポーツ団体理事として活躍している。そんな村松さんに、スポーツ団体理事として期待されること、そしてスポーツが社会に与える力について聞いた。

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    複数のスポーツ団体の社外理事を務める村松さん。スポーツ界の一歩目となったJリーグ理事就任の経緯を聞いた[写真]渡邉彰太

    Jリーグで得た気づき

    ———村松さんは2014年より7年間Jリーグ理事/参与を務められていますが、スポーツ界と関わったきっかけについて教えてください。

    外資系企業を経て独立した当時、JリーグがCSRやダイバーシティ推進の分野で経験のある人材を探している中で声がかかりました。サッカーはテレビでしか見たことがなかったぐらいでしたから、まずはびっくりしたというのが最初の感想ですね。

    サッカーを知らない自分でも大丈夫なのか、と確認しましたが、「むしろそのフラットな視点がほしいんです」と言ってもらえたことで思い切って取り組めたように思います。当時の女性理事は20名中2人で、割合としてはまだまだ少なかったですね。

    ———初めてスポーツ界に入っていかがでしたか?

    Jリーグのみなさんはとてもオープンマインドで、私のことも歓迎してくれました。最初の理事会で、お一人ずつ握手してくれたんです。それがとてもうれしかったですね。

    また、村井満チェアマン(当時)ご自身が社外理事だったこともあり、たくさんフォローしてくださいました。理事会の前に、社外理事ミーティングを開いてくださり、そこで分からないところを質問したり、ポイントの説明を受けられたりして、とても助けられました。

    ———経験のない分野の中で、最初はどんなことに取り組まれたのでしょうか。

    まずはJリーグ・クラブのことを理解するために、とにかく現場に足を運びました。非常勤の社外理事は任意参加なのですが、試合はもちろん、Jリーグや各クラブ主催のイベントなど、都合がつくかぎり出席しました。

    初心者向けの観戦ガイド「はじめてのJリーグ」ができたのもこのころです。初心者の私の意見が、サッカーが好きな人にとっては当たり前のことでも、それ以外の人にとっては分からないという気づきにつながったのだと思います。

    ———ビジネス界とスポーツ界でどのような違いを感じましたか?

    Jリーグの場合は、選手・監督等の競技関係者、自治体、スポンサー企業、ファン・サポーター、地域住民、メディアなどステークホルダーがとても多く、関係性も多様で複雑です。

    ただ、私は健全な組織づくりや経営管理を専門としていますので、そういう視点で見てみると、組織に関わるステークホルダーとどのように信頼関係をつくっていくか、社会に対して何をしていくかという点では、営利組織でも公益社団でも違いはないと感じました。

    コンプライアンスやガバナンスなど、自分の専門性が活かせると手応えを得たことで、スポーツ界での活動にさらにのめり込んでいったように思います。

    自らを「現場主義」と表現する村松さん。「全国のスタジアムに足を運びました」と振り返る[写真]渡邉彰太

    スポーツ界のダイバーシティ

    ———社外理事としてどのような役割が求められるのでしょうか。

    基本的に業務執行に必要な制度づくり、戦略づくりは常勤の執行理事がしっかりやってくれているので、社外理事はさらにイノベーションを起こすときにどうしたらいいか、あるいは組織の中から見えづらいことを組織外から見たときにどう映るか、新しい視点をもたらす役割が求められます。

    そのためにも、ダイバーシティを進めていくことが、社外理事の重要な役割だと思いますが、近年、非常に革新的だと思っているのは、WEリーグが参入基準に、女性登用を義務付け、実施状況を開示していることと、Bリーグの役員人事です。昨年の新体制で、理事・幹事17名中8名(47%)、外部理事全員が女性となり、ボードダイバーシティが進みました。

    ———社外理事、女性理事の比率の高さも多様な視点を意識した人事ということですね。

    Bリーグは、2026年に向けた将来構想「B.革新」を掲げていて、社外理事の比率や人材の多様性もさらに革新を進めるために必要ということだと理解しています。社外理事はスキルマトリクスに沿って選出されています。

    私の場合はサステナビリティとダイバーシティですが、ほかにも人事・組織改革、経営、ガバナンス、マーケティング、メディアなどのスペシャリストが集まり、それぞれの専門性を活かしながらイノベーション実行に向けて動いています。

    ———そうした組織の多様性は現場の推進力にもつながっていると感じますか。

    はい、一人ひとりのコミットメントが本当に強い組織だと感じています。みなさんとてもお忙しいのですが、理事会への参加だけでなく、事務局にも働きかけるし、現場に視察にも行く。それをさらに発信するところまでされています。

    新しい役員体制になって約半年が過ぎた今、とてもいいモデルになりそうだなと思っています。Bリーグのファン層は女性が多いので、そういったステークホルダーと経営のバランスから考えても、女性理事の割合も適切なのではないでしょうか。

    自身の経験を通じて「スポーツ団体には組織外からの視点が重要」と話した[写真]渡邉彰太

    スポーツの力を社会課題解決に

    ———スポーツと社会貢献を掛け合わせた活動も多く手がけられていますね。

    はい、Jリーグの社会連携活動「シャレン!」は立ち上げから携わっていました。WEリーグでは、「世界一アクティブな女性コミュニティ」のハブになれるよう「WE ACTION」という理念推進活動を各クラブで実施中です。

    また、Bリーグでは「B.Hope」という社会的責任活動を進めており、先日のBリーグオールスター戦では、試合だけでなく、沖縄県内の子どもたちを対象としたB.Hope Action(リモートコーチング、運動・栄養プログラム、センサリールーム、防災プログラムなど)を実施しています。

    ———スポーツにはどんな力があると思いますか?

    社外理事を務めるようになってから実感したのは、スポーツの発信力と明るいエネルギーです。ただ「ダイバーシティを推進しましょう」と発信しても興味のある人が数十人集まる規模にとどまります。でもそこに、スポーツがあればその明るさ、楽しさで人が集まってくるんです。

    スター選手が発信することで、サポーターやライト層も興味を持ってくれます。スポーツ団体、スポンサー企業、地域行政、すべてにつながりがあり、何千人、何万人に対する影響力があります。

    ———村松さんのように、ビジネスで培った経験をスポーツ界で活かしたいという方はまず何から始めたらいいでしょうか?

    スポーツ界に携わりたくてもきっかけがない方が多いかもしれません。まずは現場に出向いてみることをおすすめします。例えば、スポーツ関係のイベントにボランティアとして参加することでもいい。実際に関わってみることで、組織を知り、コミュニケーションの機会を得ることもできます。

    一方で自分が持っているスキルや経験の価値に気付くこともできると思います。語学力かもしれないし、経理、組織マネジメントかもしれない。まずは一歩目を踏み出して、ぜひ自分自身がワクワクして、活きる場所を探してみてほしいなと思います。

    Profile

    村松 邦子(むらまつ・くにこ)さん

    グローバル企業での26年間の実務経験(経営管理、内部統制、人財組織開発など)を経て、2010年に独立起業。 サステナビリティに視点を置き、ガバナンスの実効性向上を通じた経営改革を支援している。九州旅客鉄道(株)、ローム(株)、(株)ヨコオ 社外取締役。 2014年より7年間、Jリーグ理事(同参与)を務め、Jリーグ社会連携(シャレン!)の立ち上げに参画。 社外理事の立場から、スポーツを通じた社会連携、社会課題の解決にも取り組んでいる。WEリーグ、Bリーグ、日本ブラインドサッカー協会理事。筑波大学大学院修士課程修了(スポーツウエルネス領域)

     

    interview & text:藤岡祐佳/dodaSPORTS編集部
    photo:渡邉彰太

    ※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。

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