dodaのスポーツ求人

格闘技の中心をもう一度日本へ

宮内 佳祐さん

株式会社ドリームファクトリーワールドワイド RIZIN FIGHTING FEDERATION 事業局 広報部 チーフ

輸入代理店の営業から映像制作会社の広報となり、建設会社向けの新規事業開発や化粧品会社のWebマーケティング業務も担当。さまざまな業界と職種を経験した末にたどり着いたのは、学生時代からあこがれていた総合格闘技の世界だった。入社時に自身が掲げたスローガンは「格闘技の中心をもう一度日本へ」。宮内さんはこれまで得てきた経験やスキルを最大限に活かして、『RIZIN FIGHTING FEDERATION』を世界に通用するコンテンツに成長させようとしている。

Index

    学生時代は観客として『PRIDE』などの格闘技イベントを楽しんでいたという[写真]兼子愼一郎

    さまざまな業界と職種を経験

    ———これまでのキャリアを教えていただけますか?

    ぼくは旅行業界に強い専門学校の出身なんですけど、ちょうど卒業のタイミングでSARS(重症急性呼吸器症候群)という感染症が中国を中心にアジア各国で流行して、旅行業界が不況になったんです。その影響もあって就職先に旅行業界を選ぶのは避けて、輸入代理店に就職しました。主に通関の代理業務を行っている会社で、そこで既存顧客に対する営業を2年ほどやっていました。

    ———その後は映像制作会社というまったく違う業界に転職されています。

    就職した輸入代理店では年功序列が重視される部分がありまして、次第に実績によって評価される会社に行きたいという思いが強くなりました。そして、22歳ごろに転職するために千葉から上京しました。

    上京した当初は、学生時代から好きだった『RIZIN FF』の前身にあたる『PRIDE』などの格闘技イベントのプロモーションがやりたいと思っていたんですけど、ちょうどそのころに『PRIDE』が終了し、格闘技業界全体も斜陽期に差しかかっていたんです。

    そこでほかにイベントプロモーションができる仕事はないかと探して、「学歴不問」「実力主義」という言葉にひかれて映像制作会社に転職することにしました。そこでは主に宣伝、広報の仕事が多かったのですが、WebサイトやSNSの運用、各種販促物の制作、イベントの企画制作など、さまざまなことをやりましたね。

    ———映像制作会社で6年間働いたのち、ワーキングホリデーでドイツへ。帰国してからは建築系の会社で広報業務を担当されたそうですね。

    建設会社向けの新規事業開発、例えばメディアサイトの設計や制作を代行する会社だったんですけど、個人的には建設業界でブランディングに力を入れたり、広報を強化したりするというのがすごく新鮮に感じたので入社を決めました。

    当時の建設業界はなかなかIT化が進んでおらず、Webサイトを持っていない会社も多かった。そこで彼らに代わって、会社の強みや魅力を発信するお手伝いをするというのが仕事でした。ぼく自身はサイトの設計制作、ビジネスマッチングイベントの企画制作などをやっていました。

    ———その後は化粧品会社に転職されていますが、またまったく違う業界ですね。

    業界というよりは職種で選びました。当時ぼくが悩んでいたのは、自分はいろいろな仕事を経験してはいるけど「これ」という強みがないことでした。そこで、少し関わったことがあるWebのマーケティングをしっかりとやってみようと思い、31歳で化粧品会社に入りました。そこではHTMLコーディングをイチから覚えたりもしましたね。

    ワーキングホリデーで渡ったドイツでは引っ越し代行会社の作業員も経験した[写真]兼子愼一郎

    これまでの経験をフル活用

    ———そうした仕事を経て、『RIZIN FF』を運営する株式会社ドリームファクトリーワールドワイドに転職されたのはいつのことなのでしょうか?

    2018年の3月末です。先ほど話したとおり、10代のころからあこがれていた業界なので、人材が募集されているのを知ってすぐに応募しました。しかも、個人的には一番長く携わってきた広報や宣伝業務で募集されていたので、迷いはなかったです。

    ———現在の具体的な業務内容を教えてください。

    これが非常に多岐にわたっているので、説明するのが大変なんです(笑)。まず、この会社に入った当初はファンクラブの担当になりました。ぼくが入社したときはサービスの設計がまだ行き届いていないと感じたので、そこをイチから整理することから始めました。

    ほかには記者会見や公開計量の台本制作と進行管理、今年に入ってからはオフィシャルサイトのコーディングや運用部分も担当していて、ユーザーインターフェースの改修やテキストコンテンツのライティングもぼくの業務です。あとは簡単な映像の編集やSNSの運用も担当していて、幅広くやらせていただいています。

    ———これまで経験されたお仕事がフルに活かされていますね。

    本当にそう思います。少人数で運営しているので、さまざまな仕事を経験してきたぼくのような人材が活きるんじゃないかなとは入社前から感じていました。それぞれの分野において極めて専門的と言えるレベルまでには達していませんが、幅広い分野である程度のクオリティを生みだすことはできる、というところが客観的に見たぼくの強みなのかもしれません。

    ———その中でも特に大変な業務は?

    一つひとつの業務はそこまでではないのですが、同時進行で行う仕事の幅の広さと量の多さが一番大変な部分かもしれません。ぼく自身、ディレクションするよりも実務に励む機会が多いです。建築系の会社にいたときはサイトの設計制作のほかに、インタビュー原稿の執筆、写真撮影、クリエイティブのデザインもしていたので、かなり自分の手を動かしていましたが、そういった経験が今に活きていると思います。

    ———これまでの経験の中でも特に活きていると感じるスキルなどはありますか?

    スキルではなく、「何事もロジカルに考える」という思考方法は今の仕事に活きていると感じます。これはアートディレクターを養成するセミナーで学んだことです。映像にしても、広告物にしても、Webサイトにしても、見た目がカッコいいからこう作ろうとか、そういうただの思い付きで進めない。そもそもこの仕事はどのような目的でやっているのか、というところからロジカルに組み立てていくことが大切だと感じています。

    これはアートディレクションだけではなくあらゆる分野において応用できると思います。物事をロジカルに組み立てていけば、周りの意見によって変なブレ方をすることもないので、結果として仕事のクオリティとスピードが上がり、失敗したとしても次につながりやすい。

    ぼくも映像制作会社のときは完全に感覚重視でクリエイティブ広告などを作っていました。ですが、建築系の会社に同期で入ったアートディレクターの方から、「誰に何を伝えたくて作るのか、それを整理することを学んだほうがいい」と言われて、セミナーに通ったんです。この思考方法は今でも役立っています。

    デスクワークと現場仕事の両方で活躍している[写真]RIZIN FF

    開拓の機運高まる業界

    ———宮内さんが感じる日本の格闘技イベントの魅力は何ですか?

    一番の魅力はエンターテインメント性にあると思います。例えばぼくと誰かが殴り合っている姿を見てもお客さんは何とも思いませんよね。けれど仮に、20年間格闘技に打ちこんできてずっと負け続けてきた選手が、引退を前にこれまで負け続けてきた相手にリベンジするべく挑む。そういうストーリーがあれば、それが世界最強を決める戦いではなくても人の心を動かすことがあると思うんです。

    選手個人にスポットライトを当てて、試合を見る人が感情移入しやすくする。昔から日本の格闘技イベントはほかのスポーツよりもそこに力を入れていて、『PRIDE』がそうだったように、我々『RIZIN FF』も意識している部分です。

    そしてもちろん、競技としても非常に魅力的です。総合格闘技においては世界一打撃が強い人でも、世界一タックルがうまい選手と対戦したら負ける可能性が十分にある。そういうそれぞれの強みを持った、バックボーンとする競技が違う選手たちが同じリングに上がって戦う。ルールは「相手を倒す」ことなのである意味簡単ですが、そのための過程や技術まで注目するとかなり複雑です。でも、その複雑さを知れば知るほど面白くなると思います。

    ———それでは、この業界で働く上でのやりがいはどのようなものになるのでしょうか?

    未開拓の部分が多いことです。例えば、IT分野などにおいて日本の総合格闘技界はほかのスポーツに比べて後れを取っている部分もあります。でも逆に言えば、そこには大きなチャンスがある。それは働く側としては大きな魅力だと思います。

    近年はうちだけに限らずSNSや映像配信に力を入れている団体も増えていますし、業界全体としていろいろな分野を開拓していこうという機運が高まっていると個人的には感じています。『RIZIN FF』はその中でも開拓精神旺盛なほうなので、そこは魅力の一つだと思います。これをやってはいけない、ということがあまりなく、何でもできるんです。

    ———ベンチャー気質の強い人が活躍しそうな業界ですね。

    そうですね。そういう気質があまりない方にとっては厳しさを感じる業界かもしれません。けれど主体性を持って働くことができれば、何でもできる分、さまざまな経験が積める。一人ひとりの能力が非常に伸びやすい環境にあると思います。

    ———この仕事における宮内さんの夢や目標は何ですか?

    「格闘技の中心を再び日本へ」。これがぼくが入社当時に掲げたスローガンです。『PRIDE』や『K-1』の全盛期は世界中の強い選手が日本に集まっていましたが、今の中心は『UFC』があるアメリカになります。もう一度「格闘技と言えば日本」と言われるようにしたいという思いで、ぼくはこの会社に入りました。

    ただ、働いていくうちに感じたのは、日本は日本独自の進化を遂げたほうがいいかもしれないということです。世界ではケージ、つまり金網に囲まれた中で格闘技をやることが主流になってきていますが、『RIZIN FF』はリングです。金網を導入してほしいという声もあるんですけど、日本はプロレスが人気だったということからも「格闘技といえばリング」という歴史がありますし、キックボクシングの試合を同時開催することもできる。

    そうした歴史や利点があるのに、ただ世界にならえばいいのかというと疑問符が浮かんで。「日本は日本の良さをもっと伸ばしていったほうがいいのでは?」と、個人的には感じています。

    ———これまで積み重ねてきた独自の文化があるということですね。

    そうです。『RIZIN FF』を世界に通用するコンテンツにするためには、足場を固めるという意味でもまずは日本人の心をしっかりとつかんだ上で、それが世界の人たちにも受け入れられるというステップアップの仕方のほうがいいのかもしれません。そういう形で「格闘技の中心をもう一度日本へ」という目標を達成できればと思います。これは完全にぼくの個人的な目標なんですけどね(笑)。

    大きな目標を胸に、宮内さんは日々の業務に取り組んでいる[写真]RIZIN FF

    interview & text:dodaSPORTS編集部
    photo:兼子愼一郎

    ※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。

    Job information by doda

    お仕事情報

    Recruit

    スポーツ関連のピックアップ求人

    求人一覧を見る