dodaのスポーツ求人

思いを言葉にし続ける重要性

葦原 一正さん

公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE) 常務理事

スポーツ業界で活躍している著名な方をお招きし、大浦征也doda編集長とのトークを通して“スポーツ×ビジネス”で成功する秘訣をひもといていく「SPORT LIGHT Academy」。第4回のゲストは、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(Bリーグ)の常務理事を務める葦原一正さん。
2015年の発足以来、急成長を続けるBリーグを裏から支える葦原さんに、スポーツ業界に入るためのヒントや業界の現状などを語ってもらった。

Index

    野球界での経験を経て、現在はBリーグを舞台に活躍する[写真]兼子愼一郎

    周囲に助けられスポーツ業界へ

    2003年に早稲田大学大学院を修了して外資系のコンサルティング会社に入社した葦原さんは、2007年に一念発起し、プロ野球チームのオリックス・バファローズの社員としてスポーツ業界に飛びこんだ。

    その後は横浜DeNAベイスターズや株式会社フィールドマネジメントで活躍。2015年からはBリーグの立ちあげに尽力し、現在もその躍進を裏から支えている。

    コンサルティング業界、野球業界、そしてバスケットボール業界と、さまざまな現場で活躍してきた葦原さん。その経験談に注目が集まる中、対談冒頭では葦原さんがオリックス・バファローズに入るまでの経緯が語られた。

    中学生のころから「スポーツで飯を食べていく」ことを決意していたという葦原さん。スポーツビジネスの何たるかを学ぶべく、学生時代から精力的に情報を集めていたという。

    「図書館で調べたり、高校3年生のころにはインターネットが普及してきたので、そちらでも情報を集めたりしました。大学時代には、実際にスポーツを仕事にしている人たちに会って話がしたいとメールを送りまくっていましたね」

    スポーツの仕事をするのは別の業界でしっかりと力をつけてからと考えていたため、新卒で入社したのは外資系のコンサルティング会社。そこで約4年間働いたのちに、オリックス・バファローズの求人に応募して入社し、さらにその5年後には横浜DeNAベイスターズへの転職を果たす。スムーズにスポーツ業界入りを果たせた要因は、知人による助けが大きかった。

    オリックスにエントリーしたのは、「将来的にスポーツの仕事がしたい」と以前から相談していた方からの情報提供がきっかけだった。DeNAには直接オファーを受けての入社だったが、それも葦原さんがオリックスを退職すると聞いたスポーツ業界の先輩がDeNAに紹介したことがきっかけだったという。

    そうした自身の経験に基づいて、葦原さんはイベントの参加者に向けて「スポーツ業界で働きたいのなら、それを周りの人にどんどん言ったほうがいい」とアドバイスを送った。

    「ぼくは『いつかスポーツで飯を食う』という話をいろんな人にしていました。最初は親も反対したし、学校の友達も『何言ってんだ』という感じでしたが、100人に言っていたら何人かは興味を持ってくれて、ずっと言い続けていれば、さらにその中の1人くらいは助けてくれる。そんな感覚です。恥ずかしがって言わない人が多いですが、どんどん言ったほうがいい」

    スポーツ業界の求人はわずかな採用枠に対して、膨大な希望者が集まる傾向にある。その中で存在感を放つためには、葦原さんのように業界関係者と顔を合わせておくことも有効な手立ての一つといえるだろう。

    自分の意思を発信することの大切さを説いた[写真]兼子愼一郎

    チーム、リーグ、協会の違い

    キャリアの話が一段落すると、葦原さんは「いいプロスポーツチームの見分け方」や「スポーツ業界が求める人材」について持論を展開。さらには、プロ野球球団のマーケティング戦略や業界の給与事情など、なかなか聞けない貴重な話を参加者に明かしていった。語り口が熱を帯びていく中、テーマは「チーム、リーグ、協会の違い」という、それぞれの立場を知る葦原さんならではのものに移る。

    「仕事の楽しさを求めるなら絶対にチームに行くべき」と葦原さんは話す。試合の勝敗や観客数、グッズの売り上げなど指標が分かりやすいからだ。

    また、「ファンとの距離が近く、ファンマーケティングが分かりやすい」ことや「チームに行けば業界全体のことも分かる」ことから、行き先に迷った場合もチームで働くことを勧めると話す。

    一方、現在自身が所属するリーグの仕事はどうなのかというと、「つまらない」とバッサリ。主な業務は“ルール”を作ることで、「競技規則や事業のやり方など、(チームの)あるべき姿を決めている」が、常に冷静さを求められる仕事でクレームを入れられることはあっても、感謝されることはほとんどないという。

    では、なぜBリーグで働いているのか。葦原さんは「リーグがちゃんと仕切らないと業界が発展しないことを、この20年のアメリカが証明しているからです。業界全体でこうあるべきという志がある方はリーグに向いていると思います」と語る。

    アメリカのプロバスケットボールリーグであるNBAは、それぞれのチームが持っていた権利などをリーグに集約したことで大きな発展を遂げた。例えば、放映権の集約による販売価格の上昇や、共通フォーマットを使った公式Webサイト制作によるコストカットなどはその取り組みの一環である。

    転じて、「球団がバラバラに勝手なことをやって、リーグが統率しないから日本のスポーツ界は停滞している」と葦原さんは感じており、そうした状況を変革することにやりがいを感じているから、Bリーグで働いているのだという。

    そして協会に関しては、「バスケットボールに限らず、どのスポーツでも協会は保守的な印象」と語る。それが悪いことかというとそうではない。一方でBリーグは2015年に立ちあがったばかりなので、ベンチャー気質を持った若い人材が多い。現在はその2つの文化を融合させ、日本バスケットボール界のより良い発展を目指しているとのことだ。

    もちろん、このほかにもメディアやアパレルなどスポーツ関連の企業は多数存在する。どんな人と一緒にどんな仕事をしたいのか、それによって最適な職場は変わるだろう。業界入りを目指す人々には、しっかりとしたリサーチと自己分析をした上で転職先を選ぶことが求められている。

    資料を用いながら業界の内側に迫るトークを展開した[写真]兼子愼一郎

    日本バスケの聖地を作りたい

    イベント後半には、葦原さんに対しての質問が参加者から募られた。 「業界に転職することを考えて、若いうちからやった方がいいことは何か」という質問に対して、葦原さんは「英語の勉強です。ぼくは今さらやってますから」と回答。

    事業を国際的に広げる上で必須となるのはもちろん、いわく「スポーツビジネスの先進事例の多くはアメリカで生まれている」ため、それをチェックする上でも英語能力は欠かせないという。一方で現在スポーツ業界には英語が使える人材は多くなく、業界入りを目指す上では大きなアピールポイントになるようだ。

    また、「仕事へのモチベーション」についての質問には「今やりたいと思っていること」として「国際関連とBリーグと協会でアリーナを作ること」を挙げた。今の日本バスケットボール界には聖地と呼ばれる場所がなく、「子どもたちが目指す場所」としてもそうしたアリーナが必要とのこと。ニューヨークにあるバスケットボールの聖地、マディソン・スクエア・ガーデンのようなものを日本の真ん中に作りたいという野望を語ってくれた。

    質問のために設けられた時間は1時間あったが、参加者からは尽きることなく次々と質問が飛んだ。その一つひとつに丁寧に回答していくうちに、あっという間にイベントは終了時刻を迎えた。

    締めのあいさつで葦原さんはあらためて、スポーツ業界に入りたいという思いを言い続ける、発信し続ける重要性を説いた。業界の生の情報がぎゅっと凝縮された2時間。イベントに駆けつけた約50人の参加者たちの表情はとても満足げで、なにより葦原さんが退出する際の万雷の拍手がイベントの充実度を物語っていた。

    大浦編集長と葦原さんによる濃密な対談に、参加者たちは聞き入った[写真]兼子愼一郎

    text:dodaSPORTS編集部
    photo:兼子愼一郎

    ※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。

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