スポーツ界を何十年先まで支えたい
渡邊 嶺さん
ワイズ・スポーツ株式会社 企画部
ワイズ・スポーツ株式会社は、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」を運営し、サッカーやバスケットボール、野球など国内外問わず、さまざまな競技のニュースや試合日程・結果などのコンテンツを配信している。渡邊嶺さんは、企画職としてリーグや各クラブと連携し、スポーツ界全体の活性化を目指している。
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スポーツナビが掲げる「豊かなスポーツライフの実現」を目指す[写真]山口剛生
パートナーと一緒にファン獲得に取り組む日々
———現在の職務内容を教えてください。
スポーツナビのWebページのディレクションをしたり、親会社であるヤフーがJリーグやBリーグとパートナーシップを結んでいるので、その窓口としてリーグや各クラブとやり取りをさせていただいたりしています。
ディレクションでは、サッカーやバスケットボール、テニスなど多種目を担当していて、ページをより良くするためにはもっとこういうふうにしたほうがいいよね、というのをみんなで話し合いながら設計し、エンジニアやデザイナーと一緒にWebページの制作をしています。
———リーグとの取り組みではどんなことをされているのでしょうか?
新しいファンの獲得を目指して、コンテンツの連携や、リーグからいただいた情報をスポーツナビをとおして発信、拡散するお手伝いをしています。また、情報を届けるだけではなく、メディアを介してお客さまをスタジアムに誘導することにも取り組んでいます。
実際にJリーグとは、2017年9月からチケット連携が始まっていて、スポーツナビに「Jリーグチケット」のリンクを設置し、チケットを買うまでの導線を作っています。
———どんな狙いを持って、リーグと協力をしているのですか?
スポーツナビは「豊かなスポーツライフの実現」をミッション(企業理念)に掲げています。そのために、スポーツナビがスポーツ界を支えるプラットフォームになるという構想を持っていて、リーグが持っているコンテンツをスポーツナビやヤフーをとおして拡散することで、市場規模が大きくなり、パートナーであるJリーグやBリーグのファンが増える。それが結果的にヤフー、スポーツナビに還元されるのではないかと考えています。
大学卒業後は語学を学ぶためにスペインのバルセロナへ[写真]本人提供
ずっとスポーツ業界に入りたいと思っていた
———スポーツ業界に入りたいと思ったのはいつごろだったのでしょうか?
ぼくはサッカーをやっていたこともあって、小さいころからずっとスポーツ業界に入りたいと思っていました。スポーツ業界で働くことを考えて、大学ではスポーツ経営コースで学び、アルバイトでF1やFC東京のグッズの販売などをしていました。
———サッカーはいつまでやられていたんですか?
競技としてやっていたのは高校生までで、大学に入ってからは自分でプレーするのではなくて指導者の道を目指し、FC東京のスクール、地元の中学校などでコーチの手伝いをやっていました。
———今は指導者の道は?
今は考えていません。中学校でコーチをしていたときにぼくを指導してくださった先生と自分を比べて、「これは無理だな」と感じたんです。その方は子どもたちを指導する際、例えば身だしなみが良くないと、親身になってものすごい勢いで叱るんです。でも、ぼくはそこまで叱れなかった。性格上それができなかったので、自分には向いていないなと思いました。
そもそも自分は、サッカーの仕事がしたいという思いがまずあり、学校で教員として指導する道もあるなという考えだったんですよ。でも、その方は指導者としての実績もあるんですけど、教員をメインに考えている。ぼくは逆ですよね。そのずれがそもそも違うなと思いました。
———大学卒業後はどんなことをされていたんですか?
大学卒業後は、すぐには就職せずにスペインのバルセロナに語学留学しました。本当はそのままバルセロナに住みたかったのですが、ビザの関係でかないませんでした。日本に帰国してからは名古屋にあるスポーツ系の会社に就職し、3年間ほど海外のスポーツのチケット手配などをやっていました。かっこよく言うとエージェントですね(笑)。そこでぼくは主に営業を担当していて、いろいろな企業を回っていました。
———転職をされたきっかけは何だったんでしょうか?
前職時代に知り合った当時のワイズ・スポーツ社の社長に声を掛けてもらったのがきっかけですね。そのころ、フリーで働きたいと思って、前職を辞めたんです。ちょうどそのタイミングで当時の社長が食事に誘ってくれて、「もう一度サラリーマンをやる気はないか」と声を掛けてくれました。
———前職の経験で今の職業に活かされていることはありますか?
主に営業をやっていたので、いろいろな企業の社長が集まる場によく参加させていただいていました。そこには年配の方や若手社長、ベンチャー企業の方などいろいろな方がいて、そういう方々と話をさせていただく中で身についたコミュニケーションの部分ですね。目上の方や年上の方と話をするときや、クラブやリーグ、協会の方々とビジネスの話をするときに活かせているかなと思います。
入社直後に大きなスポーツイベントを経験した[写真]山口剛生
石川直宏さんのハウツー動画が7千万回以上再生
———一番印象に残った仕事は何ですか?
弊社では、スポーツをする人に向けて、ハウツー系の記事や動画を配信したり、マラソン大会のエントリーができる「スポーツナビDo」というサービスも展開しています。その中で、FC東京で選手だった石川直宏さんを起用してハウツー動画を撮らせていただきました。その動画が合計7千万回以上再生されたんです。
それは社内でも話題になりましたし、石川さん自身も周りから「あの動画見たよ」と声を掛けられるほどで、反響が想像以上にすごかったんです。反響の大きさにも驚きましたが、ぼくはFC東京でグッズ販売やコーチのアルバイトをしていたので、恩返しではないですけど、貢献できたのですごく印象に残っています。
———逆に一番大変だと思った業務はありますか?
ぼくが入社した2016年に世界的なスポーツイベントがあって、翌年にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、その翌年も大きなイベントがあり、ぼくはそのすべてに関わらせていただきました。大きなイベントでは、24時間体制でシフトを組んでいて、非常に大変な業務だなと思いましたね。
また、WBCのときに感じたのは、データがすごく細かいなと(笑)。それまでは野球も見てはいたのですが、データまでは気にしていなくて、ページを作るときにストライクが上だっけ? ボールが上だっけ? みたいな(笑)。それは楽しくもあり大変で、すごく責任感を感じながらやっていました。
———ずっとサッカーをやられてきた中で、ほかのスポーツを担当するのは大変そうですね。
そうですね。ただ、スポーツは基本的にそのルールじゃないと成り立たないと思っているので、まずはルールを気にして見るようにしています。あとは、可能な限り実際に見に行くようにしています。会社の福利厚生でスポーツ活動に対して補助が出るので、その制度を使っていろいろなスポーツを見に行っています。その制度はスポーツをするほうにも使えるので、ボルダリングやマラソン大会にエントリーしたりして、楽しみながら覚えていくようにしています。
———現在のお仕事で一番大きな失敗は何でしたか?
一番は、ぼくが担当しているメールマガジンで大量の誤配信をしてしまったことですね(苦笑)。そのときはすごく青ざめました。お詫びのメールを送るんですが、システム上、お詫びのメールも次の日にしか送れなくて……。配信した内容自体は問題なかったんですけど、件名に「テスト」と書いたまま送ってしまったんです。その後、社内のチェック体制が厳しくなりました(苦笑)。
石川直宏さん(右)を起用した動画が合計7千万回以上の再生回数を記録[写真]本人提供
3つの“カンドウ”を届ける
———仕事をする上でこだわっている部分はどんなところでしょうか?
サッカー的に言うと“運動量”を意識しています。ぼくはデジタルではないところから転職してきて、分からないことが多いので、いろいろなところに顔を出して、たくさん吸収していきたいと思っています。さまざまな競技を幅広く担当させていただいて、その中でコミュニケーションを取って、仕事をもらって、それで覚えていくということですね。
———スポーツ業界で働く一番の魅力は何だと思いますか?
一番はエモーショナルな部分かなと思います。ぼくはずっとスポーツ業界にいるので想像になってしまうのですが、ほかの業界では、試合に勝って「よしっ!」みたいなことって、あまりないと思っているんです。
でも、スポーツナビでは、日本チームや日本人選手の試合になると、みんなが急にテレビの前に集まって応援したり、勝ったときはみんなで喜びます。それもスポーツならではの魅力だと思っていますし、そういった感動をスポーツナビをとおして発信していきたいですね。
———この仕事における夢や目標はありますか?
スポーツナビは「豊かなスポーツライフの実現」というミッションのほかに、3つの“カンドウ”というビジョンがあります。1つ目のカンドウが「メディアで“感動”を届ける」。これはずっと取り組んできていて、この点ではスポーツナビはナンバーワンスポーツメディアだと思っています。
もう1つが観戦に導くと書いて“観導”。スポーツナビを見ている方を、スタジアムにどれだけ導けるか。ぼくは今、この領域に一生懸命トライしています。最後が“Can Do”と書いてカンドウ。これは実際にスポーツをする人をサポートするということで、「スポーツナビDo」がこの部分ですね。
これらの領域でスポーツナビがスポーツ界を支えるプラットフォームになりましょうと掲げていて、ぼくはこの考えにすごく共感しています。スポーツ界全体が良くなるように、今後、何十年か先のスポーツ界も支えていきたいなと思っています。
———スポーツ業界に欲しい人材、向いているのはどんな方だと思いますか?
スポーツ業界全体で言うと、デジタルに強い人材が必要だと思っています。今はデータの重要性が上がってきていて、データの貯め方や貯めてどうするか、そういった部分でデジタル系の人材が不足していると感じています。
スポーツナビで言うと、スポーツに情熱的で、ビジネスの素養もあって、いろいろなことを経験したい、どんどんチャレンジしたいという意欲がある方、ITの力でスポーツを変えたいという気持ちを持っている方と一緒に働きたいですね。
一緒に働きたいのは情熱、意欲を持っている人[写真]山口剛生
interview & text:dodaSPORTS編集部
photo:山口剛生
※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。










