『サッカーキング』の知名度を全国レベルに
伊東 聡志さん
株式会社フロムワン サッカーキング 統括編集長
伊東聡志さんはサッカー番組のリサーチャーとしてキャリアを重ね、サッカー雑誌の編集者へと転身。現在はWebサイト、Web番組、雑誌などさまざまなプラットフォームで情報を発信する『サッカーキング』の統括編集長としてメディア運営における“何でも屋”を担っている。目標は「日本全国の人が『サッカーキング』の名前を知ってくれること」だ。
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Jリーグ、カズ選手に影響を受けイタリアに語学留学へ[写真]新井賢一
27歳で転職して雑誌社へ
———スポーツ業界に入るまでの経緯を教えてください。
ぼくが中学3年生のとき(1993年)にJリーグが開幕し、高校時代にカズ(三浦知良/現横浜FC)さんがイタリア1部リーグ、セリエAのジェノアというクラブに移籍して日本中でサッカーがブームになる中で、漠然と「サッカーの仕事をしたい」と思うようになりました。
あまり勉強が得意なほうではなかったんですが、カズさんの影響で「高校を卒業したらイタリアに行こう」と決めて、卒業後にイタリア語の語学留学という名目で1年間、イタリアに行きました。結局イタリア語が話せるようにはならなかったんですが、サッカーを見て、サッカー文化やサッカーのある生活に触れる1年間を過ごすことができました。
その後、帰国してジャーナリストの専門学校に通っていたときに、サッカー専門誌で『スカパー!』の番組制作スタッフ募集の広告を見つけて応募しました。『スカパー!』は当時、セリエAを全試合放送していて、面接で、イタリアサッカーをよく見ていたという話をしたところ採用していただきました。
———その後、現在の株式会社フロムワンに転職されるんですね。
『スカパー!』では番組のリサーチャーとして、セリエAの中継やサッカー番組の制作に5年ぐらい携わらせていただきました。そこで実況や解説の方々と仲良くさせていただく中で、2005年に弊社の前社長である岩本義弘(現株式会社TSUBASA代表取締役)さんから『ワールドサッカーキング』という雑誌を創刊するので力を貸してもらえないか、という話をいただきました。良く言えばヘッドハンティングです(笑)。
ちょうど環境を変えたいと考えていた時期でもあったので、27歳で転職し、『ワールドサッカーキング』の編集業務に携わりました。
———今は「サッカーキング統括編集長」という肩書ですが、どのような経緯で就くことになったのでしょうか?
『ワールドサッカーキング』の制作を5年間ぐらいやらせていただいた後、社内でWebメディアを立ちあげることになり、それをやってみないか、という話をいただき、携わらせていただくことになりました。そこから携帯サイトやPCサイト、ソーシャルメディア、動画事業などに携わり、数年前から「サッカーキング統括編集長」という立場でやらせていただいています。
———現在の職務内容を教えてください。
一般的に「編集長」というと、すごい選手にインタビューをしたり、日本代表を取材したりというイメージだと思いますが、ぼくの「統括編集長」というのは、フロムワンで展開しているWebサイトや雑誌など、メディア事業全体を統括し、責任を取る立場です。おのおののメディアについてはそれぞれの責任者に任せているので、僕の仕事は事業を推進したり、新規事業を作ったりという業務がメインになります。
もちろん取材することもありますし、営業に行くこともあります。広報活動として自らWeb番組に出演したり、発信者になったりして、フロムワンや弊社のWebサイト『サッカーキング』をPRすることもあります。“何でも屋”という感じですね。
Web番組『サッカーキング・ハーフタイム』ではMCを務める[写真]新井賢一
Webでどうお金を稼ぐか
———スポーツ業界に入って驚いたことはありますか?
思ったより華やかな世界ではなかった、ということですかね(笑)。講義やセミナーなどで、サッカー業界で働きたい方たちに話をする機会もあり、彼らの中では「いつも本田圭佑選手や香川真司選手に取材しているんですよね?」みたいなイメージがあるようなんですけど、実はそうでもなくて。
デスクワークも多いし、お金を稼ぐためにどうすればいいのかを考えたり、雑誌の売り方を考えたり、営業担当者と一緒に営業回りをしたり、頭を下げたりすることもあります。
———特にやりがいを感じる部分を教えてください。
編集者の立場から話させてもらうと、読者からの反響があったときが一番、やりがいを感じます。ぼくは文章を書くのが苦手で、雑誌編集者時代はかなり苦労していたんですが、雑誌というパッケージされたものを販売して、はがきで自分のページに対する感想が届くというのは、編集者冥利に尽きるうれしさがありました。今だとWebのコメント欄やSNSですぐに感想を見ることができますし、批判も含めて反響はうれしいですね。
———ちなみに、カズさんへの憧れから今の道へと進んだということですが、インタビューをする機会はありましたか?
チャンスは3回ぐらいあったんですが、そのたびに同僚に譲っていて、インタビューはしていないんですよね。“魔法”が解けてしまうんじゃないか、という気がしていて(笑)。カズさんの場合は、実際にお会いして幻滅することは絶対にないと思うんですけど、自分の中で目標を達成してしまった感が出て、今後のモチベーションが消えてしまうのが怖いので、インタビューはしていません。
———では、一番大変な業務は何でしょうか?
時代的にWebがメインコンテンツになってきた中で、Webというプラットフォームでどうお金を稼ぐのかを考えることが一番大変です。あらゆる情報が無料で手に入る中、それをどうお金に換えるのかが課題となりますし、毎日考えなければならない部分ですね。
著名人を迎えたトークイベントで司会を務めることも[写真]金田慎平
夢は米国支社設立と……
———今後チャレンジしたいことはありますか?
あくまで夢なんですけど、アメリカにフロムワンの支社を作りたいと思っています。具体的なプランも何もないんですけど、スポーツビジネスを生業としているからには、スポーツビジネスの最先端を行くアメリカでじかに見て学んで、日本でできること、また日本の企業としてアメリカでできることを探ってみたいですね。
あとは、弊社でフットサルコートを運営しているので、やっぱりサッカークラブを経営してみたい。フットサルコートを持っていて、メディア事業やSNS事業、営業部など、クラブが持つべき機関はそろっているので、クラブを経営できれば、チームや選手、監督の発信力をより高められるんじゃないかと思っています。
———学生時代や前職時代の経験で、今の業務に活かされていることはありますか?
前職時代に仲良くさせていただいていた実況や解説の方々とのつながりが、同じスポーツ業界で働いていることによって今も継続されていて、どこで会っても気軽に声を掛けていただけるのはうれしいですし、キャスティングの相談をさせてもらうこともあり、ありがたく感じています。
———スポーツ業界に欲しい人材、一緒に働きたい人材は、どんなタイプの人でしょうか?
今のスポーツ業界にはビジネス視点を持っている人が入ってきていて、実際求められていると思いますけど、会社で働いていると家族以上に同じ時間を過ごすので、一緒の空間で働いていて気持ちのいい人間ならそれでいいかな、と思っています。
お金も稼げて、語学も堪能で、という人がたくさん来てくれればいいんでしょうけど、やっぱり一緒に働いていて気持ちのいい人間が来てくれるのが一番かな、と思います。
———この仕事における夢や目標を教えてください。
日本全国の人が『サッカーキング』の名前を知ってくれることが目標ですね。今はサッカーファンの間では知られているかもしれないですけど、『Yahoo!』と同じぐらいの知名度になれればと思っています。
サッカーのWebメディアの中ではトップ集団にいるという自負はあって、それはうれしいことでもあるんですが、できることならもっと飛躍させていきたい。そうするために、いろいろ考え、時代に合ったものを提供していかなければならないので、日々チャレンジだと思ってがんばっています。
来てほしい人は「一緒に働いていて気持ちのいい人間」[写真]新井賢一
interview & text:dodaSPORTS編集部
photo:新井賢一
※人物の所属および掲載内容は取材当時のものです。










